目次
モズはカワイイ?こわい?
百舌鳥(モズ)が小さい猛禽と呼ばれる理由
大きめな頭にくるくるっとした黒目がちのキュートな瞳!
モズを見ると、誰もが思わず「カワイイ」とつぶやいてしまうはず。
スズメよりちょっとだけ大きめの体で、体のわりに大きい頭。
たれ目に見えるアイライン(過眼線)、きゅっと先が曲がったクチバシが特徴的。
まるで何かのキャラクターのようなルックスで、とてもカワイく、そして愛くるしい見た目です。
しかしそんな愛されキャラな見た目とは裏腹に実は「小さな猛禽」と呼ばれています。
名ハンターの顔
モズは全国の平地や低い山の農耕地や森林、川っぱたの林などにいます。
彼らは昆虫やミミズやカエルやトカゲなど、小さな生き物を捕まえて食べていますが・・・
しかし時には、なんと!!ネズミや自分と同じサイズの小鳥を獲ることもあります。
肉食で狩りが上手!
それが小さな猛禽と呼ばれる所以です。
あの抱きしめたくなるような可愛さで「猛禽」の異名なんですから、ギャップ萌えです。
ところで、織田信長の弟さん織田信行という方は、モズを飼いならしてモズを用いた狩りを得意としていたという話があります。
その書物によれば、彼はモズを使って狩りをする際に狙った獲物を逃すことがなく、非常に高い腕前を誇っていたとかいないとか。
真偽は定かではありません。
でも、実際に江戸時代などにはモズを飼いならし狩りをして楽しむ遊びがあったというので、あながち嘘ではないと思いますよね。
見てキュートだし、狩り遊びはできるし昔の人のいいペットだったのかしら?
とはいえ、まあ・・・たぶん、タカ類ほど大きな獲物は獲らなかったと思いますが。
モズのハヤニエ
モズといえば、百舌鳥の早贄(モズのハヤニエ)。
ところで、生垣のとがった小枝や棘のある植物、時には人工物(有刺鉄線など)にミイラになったオケラやトカゲ、カエルなどが刺されているのを見たことがありますか?
私は小さいころ田舎で育ちましたのでね。
野山を駆け回っているときに、しばしばそれを見ることがありました。
その見た目は結構グロテスクで残酷!
まるでその獲物たちが「たすけて~~」と言っているままに干からびてミイラになったかのように見えます。
恐ろしくなり帰って祖母に訊ねると「それはモズのハヤニエたい」と教えてくれたのを覚えています。
モズという鳥は、獲物をとったらそうやって枝などに刺し、放置する習性があるのだということをその時に知りました。
「どんなに恐ろしい顔をした鳥だろう?ワシみたいな鋭い眼光と鋭い爪をもった大きな鳥にちがいない」
そう思っていたんですが、実際にモズを見たときは驚愕しました!!
こんな愛らしいキュートな小鳥があんなことするの??
このように、そのギャップに驚くのは世界中同じようです。
なんと、ドイツではモズのことを「絞め殺す天使」と呼ぶそうです。
恐ろしい天使だ~~~~~~!
早贄(ハヤニエ)の謎が解明される?
モズはなぜこんな残酷なことをするんだろう?すぐ食べちゃえばいいのに。
やはり、冬に食料が乏しくなった際の備蓄のため・・・というのが一番に思いつく答えですが、実はこの謎近年まではっきりと解明されていなかったようなのです。
諸説あったようですが、いくつか説をご紹介すると
1.冬場に食料が枯渇した時の保存食
これは実際に獲物がハヤニエにされたずっと後に食べられる形跡があることから、食料備蓄説というのは間違いないようです。
しかし、食べられず放置されたままのハヤニエもある様子。
獲物を刺して満足そのまま忘れて放置!ってパターンも結構多んじゃないのか?モズくんよ・・・。
2.足の力が弱いせい
モズは小さい猛禽と呼ばれるものの、猛禽類と比べると圧倒的に体が小さいです。
しかし、そこそこ大きな獲物を獲ります。
でも、体が小さいので遠くに運べないのです。
加えて、脚で獲物をがっしりとおさえて食事ができないため、適当なものにプスッと獲物を突き刺して食べる習性があるそう。
そうやって食事をしている最中、もしくは「イタダキマス!」の直前に邪魔が入ったり、ちょっと違うこと考えちゃったり・・・。
そのままうっかり放置して飛び立ってしまい、獲物はからからに乾いた結果ハヤニエに・・・という説。ありそう。笑
3.なわばり誇示のため
つまり、ここは俺の縄張りだぞ~~~~!!!と縄張りを誇示するためにハヤニエをあちこちに置くのだという説。(かわいいな)
個人的には、第三者に縄張りを誇示するのに美味しいハヤニエをおいてどうするんだろう・・・お茶目だな・・・と思う説ではありますがこの説も結構きかれる説です。
大阪市大学・北海道大学の共同研究
それは実際はモズちゃんにしかわからないことかもしれません。
ところが、近年、ハヤニエ行動の機能というのが解明されたというニュースを見ました。
大阪市大学と北海道大学の共同研究でわかったようなのですが、モズはやはり冬場の餌の枯渇したシーズンのために獲物を保存しハヤニエを作るということです。
このチームの調査によるとハヤニエにした獲物は9割は消費される様子。
モズのオスは非繁殖期にハヤニエをたくさん生産しておいて、繁殖期がはじまる頃に食べつくすそう。(忘れてないのね。)
1年を通してみると繁殖期のはじまる直前1月あたりが、ハヤニエの消費が活発であったそう。
1月といえばまだまだ寒い時期ですよね。ですので、冬の貯食という意味はそこまでないようです。
そうやってハヤニエで栄養をもりもりにとったオスは、繁殖期に大変栄養状態がよくなりつややかな声で「よいさえずり」ができるんだそうです。(スピーディにリズミカルにさえずることができる)
モズ特有の貯食(はやにえ)と繁殖(さえずり)の因果関係を解明https://tenbou.nies.go.jp/navi/metadata/102821
大阪市大学・北海道大学共同研究チーム
モズのさえずりは求愛!
「よいさえずり」=女子にモテモテ!
つまり!
「狩りが上手い」→「ハヤニエがいっぱい作れる」→「繁殖期前に栄養もりもり」→「歌が超うまくなる」→「彼女できる」→「勝ち組」
という具合か・・・。
モズくんそうなの??
ところで、雪国ではハヤニエの作られる位置で今年の冬の積雪を予測するということが昔からされていたそうです。
雪の降る量が分かっちゃうなんて不思議ですね。
そしてそれを見て人は積雪を予測するなんてモズと鳥と人間との密接な関係性を見るようで感
モズは名シンガー
モズの高鳴き
さて、先ほどモズは良い声で鳴くためにハヤニエ作りを行っているという話を書きました。
それは繁殖期の春のことなのです。
しかし、モズは秋ごろにもよく鳴きます。
これを昔から「モズの高鳴き」といいますよ。
キーキーキー!キチキチキチキチ!
見晴らしのいい木のてっぺんにとまって、甲高い声で
あの小さい体と愛くるしい顔からは考えられない音量でけんかを売るような鳴き方です。
これは、秋の初めに男の子女の子関係なく縄張りをもつため、縄張りを主張するための鳴き方です。
「こっからここまで~~~ぼくの~~~~~~~~~!!」って叫んでるんですよ。
田舎暮らしの方はおわかりかと思いますが、これが本当にうるさい。
「あ~~わかったわかった・・・。君の縄張りだよ~~~!」
と言ってあげたくなっちゃいますよ。
昔、農業を営む人はこのモズの高鳴きをきいて75日に霜が降ると目安をたてていたようです。(モズの高鳴き七十五日)
このことからもモズは昔から人の身近にいた鳥だということがわかります。
百舌鳥と書いて何と読む?
秋に縄張りを主張して鳴き、春には求愛のために鳴く。
しかも物まねも上手!
ウグイスや他の小鳥のマネをして鳴いたり、馬のいななく声を真似して鳴いたりすることも。
器用だね、モズくん。
よく鳴き、そして様々な音色を奏でることに長けているため【百舌鳥】という漢字をあてるようになったそうですよ。
というわけで、今日はモズについて書きました。
人の近くに昔からいた鳥。
知れば知るほど面白く、興味深い鳥ですね。
しかし、モズが獲物を獲る環境が激減して近年ぐっと数を減らしている鳥でもあります。
そのかわいい小さな猛禽の姿がいつまでも見られるように、私たちも考えていかなくちゃいけませんね。
ではまた次回!
【今回使用した画材・機材】
ステッドラー水彩ペン
ホルベイン色鉛筆
NIKON D500
Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR