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【伝統色とトリノイロ】クロジ

目次

クロジ

ひとことで、「黒」と言ってしまうには惜しいほどにニュアンス深い美しい体色が魅力の鳥、クロジ。
日本以外では、サハリン、千島列島、カムチャッカ半島南端にしか分布していない東アジアに限定してみられる種です。

その昔、ホオジロの仲間は「しとど」と呼ばれていました。
ホオジロの仲間であるこの鳥は、色が黒っぽいことから「くろしとど」と呼ばれていたそう。
それが「くろじ」と短縮されたのが名前の由来だといわれていますよ。

クロジを実際に目の当たりにすると、たしかにホオジロよりはうんと黒い!
しかし、その体色をよく見ると単純に黒というにはあまりにも美しい色をしています。
深くしかも青みがかって見える美しいグレー。

伝統色でたとえるならば「青鈍」でしょうか?

青鈍(あおにび)とは、青みがかった鈍色(鈍色)のこと。

鈍色とは、薄墨色にやや青をたしたような色味でいわゆるグレー。
そのグレーに藍色(あいいろ)を薄く重ねたのがこの青鈍だといわれています。

平安時代には青鈍は鈍色とともに「凶色」とされていました。
凶色とは喪服などに用いられる色のこと。
あまり縁起がいい色ではなかったようです。

しかし、江戸時代に入ると青鈍のような地味な色の人気が一気に高まりました。
地味な青鈍も例にもれず大人気に!
不吉なはずの色がなぜ?

これはエナガ(退紅)の回でも書きましたが、江戸時代に出された庶民の贅沢を禁じる奢侈禁止令(しゃしきんしれい)が関係しています。

様々なぜいたく品と一緒に、華美な色、美しい色、派手な色の着用が禁止されました。
庶民に着用が許されたのは、茶やグレーなどの地味色。

そこでこの時代の職人たちは、試行錯誤で様々な地味色のバリエーションを作り上げたのです。
四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)という言葉が残っていますが、これはこの時代の染め物職人たちが編み出した45色の茶色と100色のグレーを指す言葉です。(実際はもっと多くの色が生み出されました)

厳しい法令を逆手に取るようにして、庶民たちが創意工夫し日々の生活を楽しんでいたのですね。

クロジは地味に見えます。
クロでもなければグレーでもブルーでもない、地味であいまいな色味。
しかし、江戸っ子にいわせれば「粋な色の鳥」なのかも?

私自身、地味な色の鳥が好きです。
中でも、クロジの色味はたまらなく好み。
あのニュアンス深いグレートーンの粋な色味に、私の中の「日本人魂」が大いにくすぐられるのかもしれません。

*伝統色シリーズ
鳥の色は、図鑑や書籍などで端的に表現される場合がほとんどです。
しかし日本には、たくさんの色名が存在します。
「もっとこんな表現はどうかな?」「こっちの色が近い気がするな」そんな気持ちを素敵な日本の伝統色を紹介しながら綴るシリーズです。

*記載の色は色名に対する近似値(おおよそのもの)です。
文献や書籍によって解釈が異なる場合もございます。
またお使いのモニターや端末によって色が違って見えることもあります!

<参考文献>
美しい日本の伝統色 / PIE international / 
日本の色辞典 / 紫紅社

色と文化と心――色彩嗜好の国際比較から│55号 その先の藍へ:機関誌『水の文化』│

なぜ日本人の「色彩感覚」は世界で賞賛されるのか | | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

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