今回の野鳥観察記は、広大な自然の残る探鳥地【渡良瀬遊水地】に行ってきました。
猛禽類がとにかく多く、生態系の豊かさがよく分かる湿地帯です。
渡瀬川の豊かな水を湛え、周辺には雄大な農耕地が広がり、ラムサール条約のもと自然を守る意識も高い素晴らしい環境。
1泊2日の散策で、どんな野鳥が見れたのか一緒に見て行きましょう!
目次
渡良瀬遊水地(猛禽祭り)
当日のコンデジション
気温 | 14~25℃ |
湿度 | 55% |
天候 | 快晴 |
日にち | 4月7日~8日 |
渡良瀬遊水地はとにかく、猛禽類の種類と数が多いエリアです。
今回の観察では9種の猛禽類を確認できました。
しかし、時期的に葦原の野焼きを行った直後ということもあり
全体的には野鳥の数は少なかったように思います。
コウノトリの保護に努めていることでも有名で、エリア内には複数のコウノトリゆりかごが設置されています。
その中の2つに、赤ちゃんが産まれていて、コウノトリ観察の人が大勢集まっていました。
今回は、地元の方とお話しする機会もあったのですが
コウノトリの発育も順調のようで何よりでした。
しかし、一つ残念な情報も(汗)
ずっとこのエリアに住み着いていたコミミズクが、先月オオタカに食べられてしまったのだとか
こればかりは、自然の生態系なので致し方ないのですが。。。
猛禽類の天国!渡良瀬遊水地の観察記録です!
観察した野鳥
ハイイロチュウヒ
まずはこの湿地の象徴的な猛禽からご紹介。
ハイイロチュウヒやチュウヒは、湿地帯で繁殖するという猛禽類の中でも珍しい種です。
特に、このハイイロチュウヒは、日本では旅鳥で渡ってくる個体数も少ないため珍しいのですが
ここ、渡良瀬遊水地には数羽のハイイロチュウヒが留鳥として生活しています。
しかし、現在雄のハイイロチュウヒが亡くなってしまったためメスしか残っていないのだとか。
人間が、できるだけストレスをかけずに見守っていきたい野鳥です。
この渡良瀬遊水地は広大なひらけた地形が特徴です。
その為、野鳥たちがのびのびと自由に飛び回っている印象です。
ですので、観察をするには野鳥との距離が遠い場所でもあります。
この日も、多くの猛禽類をはじめ様々な野鳥の声や姿を確認しました。
しかし、遠くを飛んでいる。そういった写真ばかりになっていたのです。
2日目の夕日が沈みはじめ、もう観察も終了かなと思っていた矢先。
このハイイロチュウヒが目の前を飛んでくれました!
ISOが上がりすぎていて、綺麗な写真とはいきませんでしたが
目の前を雄大に飛ぶ姿に感動しました。
チュウヒ
こちらは、現在絶滅危惧1類に分類されている猛禽類チュウヒです。
2日間のうち、遠くを数回飛んでくれました。
チュウヒは国内型と大陸型の2種類が日本で確認できる種類です。
この写真の個体は国内型。
カラスほどの大きさで、写真のように羽をVの字にして低空飛行します。
遠目にはトビに似ていますが、この羽の形や飛ぶ位置などで遠目にも確認できます。
この日も、何羽かは地面に急降下していたので、獲物をGTEできたのかもしれません!
トビ
数いる猛禽類の中でも、トビが特に個体数も多く集団で生活している様子が伺えました。
偶然、私の目の前に捕まえたネズミを持って飛んできてくれたのがこの子です。
トビは、狩は少し苦手なのですが、果敢に獲物にアタックする猛禽類でもあります。
その為、トビの動きで野鳥たちが飛び立ったりするので、トビの動きに注目していると
思わず隠れていた野鳥を発見するといった場面も多いです。
チョウゲンボウ
先日の聖蹟桜ヶ丘での観察に続き、チョウゲンボウとも出会えました。
2日間で、チョウゲンボウは3羽確認できました。
先ほども書いたように、渡良瀬遊水地は野鳥との距離が遠いのが特徴です。
ですので、今回は超望遠レンズにテレコンもつけて持っていっていたのですが
この距離でこちらを見ている??
これ、結構距離離れているんですよ!
できるだけ野鳥に近づかないように注意しながら撮影していたのですが
さすが!写真で確認するとバッチリこちらに気づいている様子です。
この個体は毛並みも綺麗で健康に育っているという印象でした!
周辺には農耕地も多く、食料のネズミなんかも多いんでしょうね!
コチョウゲンボウ
こちらも、帰るギリギリに目の前を飛んでくれたコチョウゲンボウです。
2羽でじゃれあっっていて、この子だけ私たちの目の前に飛んできました!
この個体はメスなので、もう一匹は雄だったかもしれませんね!
チョウゲンボウとコチョウゲンボウのメスは本当に似ていて見分けが難しいのですが
尻尾の線の太さやお腹の模様などで判断ができます。
また、眉斑がハッキリしているか?ってのもポイントです。
このように尾羽のラインが太く少ないので、この子がコチョウゲンボウだと判別できます。
大きさもチョウゲンボウに比べ少し小さいながらも、肉眼ではほぼ同じに見えますので
写真で撮っておくと、後々このような微妙な違いを判断しやすいと思います。
チョウゲンボウはハヤブサ目にしてはスピードタイプではありませんが
このコチョウゲンボウはスピードが速いので、確認するのが難しい種だと思います。
サシバ
渡良瀬遊水地はとにかく広大で、周辺の環境も入れると車での移動が必須です。
特に、猛禽類は周辺の農耕地などで狩りを行っているので、狩りの様子を見ようと思うと
車であちこち移動しながらの大捜索になってしまいます。
この日も、あちこち行ったり来たり忙しく動き回っていました。
その時に、頭上を飛んだのがこのサシバです。
サシバも絶滅危惧2類に分類されていて、近年は本当に危険な状況が続いている猛禽類です。
カエルや蛇などを餌にしていますが、餌不足や生活環境の悪化で数を減らしています。
昔は、夏になるとカエルの合唱が至る所から聞こえていましたが
その鳴き声も極端に少なくなってしまいましたよね。。
ノスリ
ノスリも元気に生活してました!
名前の由来にもなっていますが野を擦るノスリです。
インターネットなどで見ていると、鵟(ノスリ)と中飛(チュウヒ)は名前を間違えられた。
という記事がよく出てきます。
ノスリは比較的中空をとび、チュウヒは地面スレスレを飛ぶ。
この2種は、名前を取り違えられて登録されてしまった!
そういう記事です。
しかし、実際はそのような事実はなく、今ではその説は間違いだと判明しています。
昔は、その説が図鑑なでのによく掲載されており、信じてしまっている人も多いのだとか。
実際に、観察しているとノスリは飛ぶのが上手で地面スレスレをうまく飛行します。
逆に、チュウヒは獲物の背後から不意打ちで仕掛けるので、中空から獲物を狙っています。
ウグイス
今回、特に印象深かったのがウグイスの囀りです。
至る所から『ほー法華経。ほーほけきょう。』と念仏が聞こえていました(笑)
ウグイスほど、鳴き声は有名で姿は知らないという野鳥は珍しいと思います。
野鳥界きっての囀りマスターなのに、その姿は全然有名じゃないという。。。
本当に至る所で鳴いていたので、もう耳が痛い痛い!
特に、一生懸命鳴き声を聞きながら野鳥観察していると、その日の夜には
ベットの中で、『法華経、法華経』と念仏が止まらなくなってしまいました。
それは、藪や草むらの中からなかなか出てこないという特徴があるからです。
ですので、ウグイスの姿を目撃したいならとにかく待つ。
待って待って待ち侘びて、持久戦でチラッと姿を見せた時に、今だ!とガン見する!(笑)
そういった忍耐力が必要な野鳥です。
ホオジロ
ホオジロもたくさん囀っっていました!
ホオジロの囀りもとても美しく、遠くまで響く声なのですぐに見つかります。
特に、この子たちは目立つ場所で囀るので、声が聞こえると木の上を見上げると
我ここにあり!と胸を張って美しい歌声を披露しています。
キジ
私はキジが大好きです。ご存じ日本の国鳥として鬼退治にも参加しました。
キジってちょっとおっちょこちょいで、向こうからひょこっと人前に出てきたりします。
そして、ギョッと驚いて走って逃げるっていう。
いやいや待ってよ!あなたが自ら出てきたのよー!と言いたくなるのですが
話しかける前に、猛烈な勢いで逃げています(笑)
キジって、すごくナワバリ意識が高く『母衣打ち』と呼ばれる威嚇行動を取ります。
その為、自身の縄張りの中では、逆にのんびり餌を食べていると私は予想しています(笑)
ですので、急な来訪に驚いてテンパっちゃうんだと思うんです。
『キジも鳴かずば撃たれまい』という言葉がありますが
じっとしていれば気づかないのに、焦って飛び出してくるのでこちらが逆に驚いちゃいます。
アカアシシギ
こちらも絶滅危惧2類に分類されているアカアシシギ。
二匹で仲良く湿地帯をせっせと漁っておりました。
アカアシシギは、ツルシギとそっくりで見極めるのが本当に難しいのですが
ここで、あの力強い味方がやってきました!
トビが飛んできたのです!
このとき、トビはアカアシシギを狙っていた訳ではないのですが
アカアシシギ二匹が驚いて飛び上がりました!
この時に、特徴的な白い風切り羽根と背中の白いラインがはっきり見えました。
それで、この子たちがアカアシシギだと判明しました。
なかなかお目にかかれないシギなので、今回見れて本当にラッキーです!
コウノトリ
先ほども書きましたが、渡良瀬遊水地はコウノトリの保護が盛んで、日本で数少ない繁殖地としても有名です。
大型の水鳥で体長112cmもあります。
身近な鳥でいうと、ダイサギやアオサギより大きいのですから、その迫力は圧巻です。
ご存じのように、絶滅危惧1類に分類されており、日本の天然記念物にも指定されています。
トキなどと並び、地域や行政あげての保全活動が行われている野鳥です。
しかし、いつも複雑な思いになるんです。
もちろん、トキやコウノトリを守っていく活動は大切だと思います。
しかし、現在絶滅危惧1類、つまり絶滅一歩手前の種は国内に55種もいるんです。
先ほど紹介したチュウヒもその中の一つです。
その多くが、人間の行動が原因で生活の場覆われたり数を減らしています。
コウノトリも、かつてはどこにでもいる野鳥でした。
しかし、人間の乱獲や自然破壊、農薬散布などの影響で数を減らした種です。
コウノトリは、まだラッキーだと思います。
こうやって、人間が保全活動に乗り出していますから。
しかし、人間が特別保全意識を持っていない種は、今こうしている間も絶滅するのを待っているのです。
もう一度言いますが、トキやコウノトリを保全することは大切です。
しかし、もっと根本的な人間の破壊活動や生活そのものを見直す議論を進めるべきじゃないでしょうか?
コウノトリの保全活動をしてやっている感が出てしまうのは怖いなと思います。
現実問題、ラムサール条約湿地である、葛西臨海公園はオリンピックの会場になる寸前でしたし
渡良瀬遊水地も、ゴルフ場の建設など、周辺の開発は行われています。
また、有明海の水門問題のように、完全に利権だけで行われる自然破壊もあるわけです。
もっと、根本的な部分を議論し改善していく、そして同時進行でトキやコウノトリの保全も行う。
こういった活動や議論が、全国でもっともっと一般的に行われてほしいなと思います。
まとめ
今回は渡良瀬遊水地に行ってきました。
ラムサール条約登録地ということもあり、自然が多く残っていて生態系の豊かさを感じました。
敷地も広大なので、このような保護区というのは本当に貴重だと思います。
地元の方の話では、猪も1000等近く生息していたり、鳥だけでなく様々な自然の営みが繰り広げられているようです。
自然の生態系っていうのは、本当に多くの種が複雑に絡み合って成り立っています。
人間が考えるよりもっともっと複雑ですし、今だ多くのことが分かっていません。
だからこそ、地球全体をもっと守っていかなきゃいけないのです。
コウノトリを守っても、そのコウノトリが食べる魚やカエル、カエルが食べる昆虫、昆虫のすむ環境。
その全てを守っていなければ意味がありません。
その為には、人間のわがままを少しづつ無くしていく必要があります。
虫がいることが普通なのです、虫に食われた野菜が自然なのです。
私たちが何気なく行くスーパーマーケットに並ぶ野菜。
その野菜が色艶よく、綺麗で、形もいい。その背景にはコウノトリの激減があるかもしれません。
ではまた次回
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