ツバメの飛来の便りがちらほら届き始めました。
毎年、何千キロも旅をして、繁殖をしに日本へやってくるツバメたち。
「今年も無事にやってくるかな?」と心配になってしまいます。
今回の記事は、そんなツバメのモテる秘訣について書いてみようと思います。
長距離を繁殖のために旅してやってくるツバメたちは、どのようにペアを作っているのでしょうか?
日本では人の近くで子育てをするツバメ。
そんなツバメの恋のお話です。
目次
ツバメのモテる秘訣は?
ツバメの場合、メスとオスを見分ける方法は主に3つあります。
・尾羽の両端が長いのがオス
・喉の赤い色がオスの方が濃い
・尾羽にある白い斑がオスの方が大きい
この3点がオスとメスの主な違いになります。
ということは、この3点の違いが、オスのモテる秘訣である可能性が高いと言えそうです。
尾羽がより長く左右対称なほどモテる
ヨーロッパの研究では、尾羽の両端が長くてより左右対称なオスがモテるというデータがあります。
まず、尾羽の長さによるモテ度を調べた結果、明らかに尾羽の長いオスの方が配偶成功率も繁殖成功率も高いことが分かりました。
そこで今度は、左右対称なほどモテるのか?と調べてみました。
すると、左右の尾羽の長さが同じ(対称)なオスほど、メスに好まれているということがわかったのです。
しかし、この実験には異論もありました。
『いやいや。それはメスが好んだというより、左右対称な方がより上手に飛べて餌がとれるとか、色々他にもあるでしょ?』
やはり左右対称がモテている?
そこで、今度は尾羽の長さではなく色を左右非対称にして実験してみました。
つまり、わざと尾羽に印をつけて、長さの違いではなく色の違いを作り出して調べたのです。
すると、これも左右対称の色のオスほどメスにより選ばれ、巣立ち雛の数も多いということがわかりました。
面白いですよね!
長い尾羽だけでなく、左右対称の長さと色味がモテる秘訣だったのです。
モテるのは人もツバメも難しい
さて、人のモテる条件についても少し考えてみようと思います。
皆さんもご存知だと思いますが、モテるってとても大変です(笑)
オシャレをしても、ギターがうまくても、高収入でも、モテない時はモテない。
ここで、前提として押さえておきたいのが、メス(女性)がオス(男性)を選ぶということです。
もちろん、今の時代男女を分けてそう決めつけるのはいかがなものか?という意見はあると思います。
それに、人の場合は多くの生物の中でも高度な精神活動を行うことができるので、なかなか簡単に男女を分けることはできません。
しかし、生物の世界では結婚相手を選ぶ主導権はメスにあるというのが一般的な考え方です。
なぜなら、メスの方が繁殖においてオスよりも多くの代償(投資量)を払っていると考えられているからです。
左右対称がモテる?
ニューメキシコ大学で行われた、人を対象にした面白い研究で、より左右対称の見た目をしている人がモテるという結果があります。
肘の幅や足の幅など7つの対称性を計測し、顔の作りの対称性との関係を調べました。
そして、顔の対称性が異性から魅力的だと思われるのかどうかを調べました。
すると、身体的な対称性が高い人ほど顔の作りが対照であること。
そして、顔の作りが対称である人の方がよりモテることがわかったのです。
なんとツバメと同じです!
やはりモテるのは難しい
しかし、この研究は完全とは言えません。
なぜなら、地域によって文化も違えば価値観も違うし、時代によってもモテる条件は変わるからです。
つまり、この実験が行われたアメリカのニューメキシコ大学のアルバイト学生にのみ当てはまる結果かもしれないというわけ。
それに、見た目だけで異性を選ぶ人はほとんどいないと思われます。
いくら見た目が良くても、性格が最悪だったらモテるはずがありません。
これは当然と言えば当然ですよね!
『顔が左右対称だったらモテる!』と言われても
『そりゃあ、左右対称だと美しいだろうけど、そこが一番の基準じゃない』
と誰もが考えるはずです。
地域によって違う?
ツバメの話に戻しますと、実は先ほど紹介した『尾羽がより長くて左右対称なほどモテる』というデータは主にヨーロッパの研究で、北アメリカや日本での研究では否定的な結果が出ています。
つまり、先ほどの人での実験同様、地域差やツバメの暮らす環境などによってモテる基準が違う可能性があるのです。
日本のツバメ研究
2005年と2006年に筑波大学で行われた調査によると、尾羽の白斑が大きいオスと、喉の赤さが濃いオスほどモテるという事が示唆されました。
『早く卵を産み始めたツバメほど多くのヒナを巣立たせる』という事が知られていたので。
どのような特徴のオスが、より早く卵を生ませるのか?を調べてみることにしたのです。
すると、尾羽の白斑が大きく、喉の赤さが濃いオスほど早い事がわかりました。
ちなみに、メスのモテる条件はカラフルな喉と尾羽の長さなのだとか!(笑)
また、中国の研究によると、腹部の色の違いが繁殖成功率に関係していることもわかっています。
地域による違い
欧米のツバメは、牛舎などにコロニーを作って集団で繁殖を行うことが多いようです。
一方、日本のツバメは、街中に散らばって各々が違う環境で子育てを行います。
こういった営巣場所の違いなどが、長い時間をかけてツバメのモテる条件に影響したのかもしれません。
というのも、集団で同じ場所で繁殖をする場合は、より多くの餌を運べる個体の方がモテると考えられます。
つまり、尾羽が長く飛行能力が高いオスが有利なように見えますよね。
一方、違う環境に縄張りを作る場合は、より栄養資源の多く繁殖に有利な場所に縄張りを作れるオスの方が有利です。
栄養資源の多い縄張りを確保できる強いオスは、栄養が十分で美しい羽色になる事が知られています。
こういった繁殖環境の違いが、地域によるツバメたちのモテる条件の違いを生んでいるのかもしれません。
もうすぐツバメたちの繁殖がみれる時期です。
皆さんも『どのオスがモテそうか?』メスの気持ちになって見極めてみるのも面白いかもしれませんよ!
ではまた次回。
参考文献
・Hasegawa,M. 2010. Mating Advantage of multiple male ornaments in the Barn Swallow Hirundo rustica gutturalis . Ornithol. Sci. 9:141-148
・Hasegawa,M. 2017. Reproductive advantage of multiple female ornaments in the Asian Barn Swallow. J,Ornitjlogy 158:517-532
・Yu,Liu. 2018. Ventral color, not tail streamer length, is associated with seasonal reproductive performance in a Chinese population of barn Swallows. J,Ornithology. 159:675-685
・江口和洋編(2016)鳥の行動経済学/京都大学芸術出版会