目次
ムクドリ
夕方になると街路樹でギャーギャー騒ぐムクドリさん。
【害鳥】なんて辛辣なレッテルを貼られて、一部では嫌われていたりもしています。
しかし、実はいろいろ大変なんですよ!ムクドリさんも・・・
今回は、そんなムクドリの知られざる実態に迫ってみようと思います!!
ムクドリの特徴
人間にとってトップクラスに身近な野鳥さんです。
ですので、野鳥に興味のない方でも名前や姿を知っている人も多いと思います。
しかし、基本的に、野生動物が人間の身近で暮らすということは、悲劇的な結末を生んでしまいます。
今回主役のムクドリさんたちも、人間世界ではトラブルメーカー。
主に、騒音問題と糞害で、多くの自治体が問題解決に頭を悩ましています。
仲間で会話している
そんなムクドリは、スズメ目ムクドリ科ムクドリ属の野鳥!
スズメ目は鳴禽類とも呼ばれ、鳴くことが上手なグループです。
鳴くと一言で言っても、オオルリのような美しい囀りから、スズメのチュンチュンと言うシンプルなものまで様々です。
ムクドリは、美しいさえずりはしませんが、鳴き声でグループ内のコミュニケーションをとっています。
実は、脳内に仲間の鳴き声を聞き、分析し、学習し、言葉を覚えるという複雑な回路を持っています。
人間の赤ちゃんが最初『バブバブ』と話していたのに、親の言葉を聞き学習し次第に言葉が話せるように
ムクドリも、仲間の会話を聞きながら覚え話すという事ができます。
これは、グループで生活するという環境がそう進化させたのだと考えられています。
ムクドリの鳴き声
『キュルキュルキュキュルリキュキュキュル』とちょっと甘えたような声で囀ります。
しかし、この囀りがちょっと控えめで小声なので、印象としては地鳴きの方が有名です。
地鳴きは、皆さんも駅前で聞いた事があると思いますが(笑)
『ジャー!ジャー!』
と盛大に鳴きます。
よく聞いていると、ビチュビチュやジュリジュリなどいろいろな言葉を使っているのがわかりますよ!
ヒヨドリなども同じですが、ムクドリも決まった音節を繰り返すような単純な鳴き方ではありません。
ですので、鳴き方を覚えるより、声の特徴を覚えると聞き分けしやすくなると思います。
見た目の特徴
ムクドリは、黒い体色にオレンジの嘴や足がワンポイントのオシャレな見た目をしています。
しかし、お顔は個体差のある白い柄が入っていて、この柄がちょっとガチャガチャしていて残念です(笑)
一部の人には汚い顔と呼ばれていたりも・・・
止まっている時には目立ちませんが、飛ぶと腰の辺りが白く目立ちます。
飛んでいる鳥はあっという間に飛び去ってしまいますが、腰の白を見落とさなければムクドリだ!とわかりますよ!
また、基本的には雌雄同色ですが、雌の方が若干色味が薄めです。
色が薄いもの、顔が白いものと結構個体差がある鳥のなので色々な柄を観察できますよ!
生息地は?
日本では主に留鳥として分布しています。
北海道以北では夏鳥、南西諸島では冬鳥として漂鳥として移動もしています。
しかし、現在では北海道などでも留鳥として留まるものも増えているのだとか。
世界的には珍しく、日本の他には朝鮮半島や中国東部など限られた地域にか分布していません。
ムクドリの生態
ムクドリは農耕地や河川敷などの開けた環境を好みます。
木の生い茂る森林などではほとんど見かけない野鳥です。
芝生のサッカーグランドの様な環境が大好きな野鳥ですね!
何を食べてるの?
と言うのも、そういった開けた環境にいる虫を好んで食べています。
蜘蛛や小型の爬虫類など、また土の中にいる幼虫などを食べているんです。
地面をひょこひょこ飛び跳ねながら、大好きな昆虫を探し回っているのをよく見かけます。
特に、夏になると昆虫が多くなるので、ムクドリの採餌もよく見られる様になります。
また、木の実も大好きで、イチイ・クスノキ・ビワ・センダンなど多種多様な木の実を食べています。
ムクドリの食性がもたらすもの
鳥類学者の川上和人さんの著書『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』という面白い本があります。
この本の中で、川上さんが言っていて面白いなと思った仮説(妄想?)をご紹介したいのですが。
鳥の役割の1つは、捕食者だ。〜中略〜
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る / 川上和人
樹上の昆虫は哺乳類では食べきれない。
多数の幼虫が後のことを考えないキリギリスのように葉っぱを食べ尽くす。
後先考えてもらえなかった木は枯れる。
木材を食べるカミキリムシがワサワサと大発生する。
大発生してもそれを食べる鳥がいないから、増加は止まらない。〜中略〜
植物がなくなりすぎると昆虫も食物がなくなり減少するので、植物の衰退はある程度で止まり
植物 vs 昆虫の仁義なき世界が始まる。
もし、日本から鳥類がいなくなったらという仮定で、鳥類学者の妄想する結果です。
つまり、昆虫を食べている野鳥がいて、昆虫もある程度の数に抑えられ、植物もいい感じで生きている。
長い年月かけて、そういうバランスの上で今の住み良い地球環境があるということです。
・益鳥としてのムクドリ
江戸時代初期、土佐藩家老の野中兼山という人がこういう言葉を残しています。
『椋鳥には千羽に一羽の毒がある』これは、当時ムクドリを捕まえて食べていた農民へ送った言葉です。
つまり、虫を食べてくれる益鳥(人間にとって役に立つ鳥)のムクドリを獲って食べてはいけない。
ムクドリが減ってしまうと、虫が増えて農業に悪影響が出てしまう。
サッカーグランドや都市公園にいるムクドリですが、彼らがいないと虫が増えることになってしまいます。
・種子散布者
もう一つ、ムクドリの食性がもたらす好影響に種子の散布があります。
ムクドリは、木の実や果物などを食べます。
しかし、種の部分は硬くて消化できないので、ペリットと言って吐き戻しを行うのです。
このペリットが植物からすると大助かり!!
発芽しやすい状況で効率よく種子を散布してくれるので、生態系の安定に役立っているのです。
この様に、ムクドリは生態系にも人間にとっても大切な役割を担っているというわけです。
繁殖
ムクドリの繁殖期は4月上旬から6月にかけて!
元々は樹洞(木の幹にできた穴)を巣として利用して産卵をしています。
しかし、近年は都市への進出などにより、人家の屋根裏や建築物の隙間などを利用したりもしています。
一回に5〜7個の卵を産んで育てます。
抱卵は12日程度、育雛は20日程度ですので、産卵から約1ヶ月で雛は巣立ちします。
・種内托卵
自分達で巣材を編んで巣を作るというタイプではなく、環境を利用するタイプですので
時には、巣に適した環境を見つける事ができないカップルもいます。
そんなカップルは、なんと!仲間の巣に自分の卵を産み預けるという行動をします。
そのような習性があるのも、グループで生活するムクドリならではなのかもしれませんね。
ヒナが誕生すると、集団はさらに膨れ上がっていきます。
数100から数1000羽、時には10,000羽以上にもなるそうです。
集団ねぐら
害鳥としての側面。一番問題になっているのがこの集団ねぐら問題です。
都市部の街路樹、主にケヤキを中心に落葉高木に集団ねぐらを形成します。
ムクドリは、集団で力を合わせて生活している野鳥です。
集団で生活するメリットとして、天敵から身を守ることや採餌場所などの情報共有などが挙げられます。
都市部の街路樹は、いろいろな意味で椋鳥にとって好都合です。
高いビルなどあり、雨風などから身を守れる。
天敵となる猛禽類などが少ない。
街灯などもあり、周囲を警戒しやすい。
この様な理由で、都市部の街路樹はムクドリに好まれている様です。
夕方になると、各地採餌に散っていたムクドリたちがねぐらに集合します。
この時『ここに集まれー!』という集合の鳴き声がまずうるさい!
そして、樹内に入ってからも『ここは僕の場所だ!もっとあっちいけよ!』と
寝る場所が定まるまではギャーギャー騒いでいます。
鳴き声でコミュニケーションをとるムクドリならではの行動と言えますよね。
集団ねぐらのピーク
5月ごろからムクドリが増え始め、8月〜10月ぐらいがピークで11月、12月と徐々に減っていきます。
産卵時期が4月から始まることを考えると、この産卵が集団ねぐらの時期と関係している様です。
赤ちゃんが巣立つ6月〜8月以降にピークを迎えるのも納得できます。
ではなぜ冬に少なくなるのでしょう?
・野鳥の寿命
野生動物には基本的に寿命という考え方はありません。
なぜなら、人間のように一生を全うする個体がほぼいないからです。
怪我をしたり、病気になったりして弱った個体はすぐに捕食されてしまいます。
ですので、野鳥の死体を日頃見かけないのもそのせいです。
その種の置かれている危険度や、種の強さなどが平均寿命に反映しています。
一般的に雛は生まれた総数の80%ほどが半年ほどで死んでしまいます。
繁殖した親鳥でも、翌年まで生きている可能性は高くありません。
ですので、その死のリスクを考えると、多くの鳥類が一回の繁殖に5〜10個の卵を産むのも頷ける話です。
夏にあれほど目立っていたムクドリが、冬になると数を減らすのも
その様な要因も関係あるのではないかと私は考えています。
実は数を減らしている?
都市部に住んでいるとムクドリは年々増えている様に感じます。
しかし、全国的には数を減らしていると言われています。
え?まじ?と思われるかもしれませんが、私の実感としても地方に行くほど見かけなくなります。
この理由はまだ解明されていない部分もある様ですが、放置農地や過疎化による田舎の荒廃などが考えられています。
ムクドリは、開けた環境を好む野鳥です。
農耕地や河川敷など、ある程度採餌できる開けた環境が整っているうちはいいのですが
人間の手が行き届かなくなって荒れた土地では、採餌が困難になってしまいます。
そのように、地方での生活が困難になったムクドリたちが、都市部に進出してきているのかもしれません。
まとめ
すごく馴染み深い野鳥でもあるムクドリ!
そして、何かと害鳥として問題視されてもいるムクドリ・・・
しかし、その背景にあるムクドリを取り巻くいろいろな状況を見ていくと
日頃何気なく観察できるムクドリも、また違った見え方をしていきいます。
バードウォッチングといえば、森林などに出かけて行って珍しい野鳥を探す。
そういうイメージを持っている方もいると思います。
しかし、身近にいる野鳥も、もっと知ることで観察しがいのある対象になります!
それに、森林に出かけた時にも、実は【そこにいない鳥】のことを考えてみるのも面白いんです。
日頃よく目にする野鳥だからこそ、もっともっと知っていけたらなと感じます。