私は、実家で長い間ネコを飼っていました。
「イヌ派?ネコ派?」と問われると、間違いなくネコ派!
そんな私ですが、今回の記事はネコの生態系への被害の現状について書いてみようと思います。
この問題は、緊急を要する世界的な問題にも関わらず、いまいち理解が進んでいないのが現状です。
というより、世界にはネコ愛好家がとても多く、感情的な面で理解しづらい(理解したくない)のかもしれません。
とてもデリケートな問題ですが、研究論文を引用し客観的事実だけをまとめてみようと思います。
目次
ネコによる生態系への被害
2023年12月12日。有名な科学雑誌natureに「A global synthesis and assessment of free-ranging domestic cat diet(放し飼いノネコの食事の世界的な総合と評価)」という論文が発表されました。
この論文は、過去100年以上に渡り研究されてきた、ノネコが生態系に与える影響を総合的に判断し
一つのデータベースとして構築し地球規模に分布するノネコに関する情報を整理するという目的で行われました。
簡単に言えば【過去の研究を集めてまとめよう!】ということです。
そうすることで、ノネコの生態系への影響をもっと知ることができるというわけですね。
ネコの基本情報
ネコは、アフリカやアラビア半島などに生息するリビアヤマネコを祖先とする家畜化された動物です。
一説によると、農耕の発達とともに、穀物を荒らすネズミを捕まえる為に飼い慣らされたのだとか。
ネコと呼んでいますが、正式には【イエネコ】といいます。
また、ノネコや地域猫など様々な呼び名と、それぞれの定義がありますが、今回の記事では【ネコ】で統一しようと思っています。
ネコは、狩猟能力がとても高く、屋外にいる個体は哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類などなんでも食べます。
また、食べる目的以外でも動物を襲う習性もあります。
実際、私が飼っていたネコは本当に様々なものを獲ってきては縁側に置いていました。
そして、繁殖力が高いのも特徴です。
生後4~12ヶ月で繁殖可能となり一度の出産数は4~8頭、年に2~4回出産する母ネコもいます。
ネコの世界的な分布と特徴
ネコは、9,000年以上前に家畜化され、人の手で世界中の多くの地域に導入されました。
現在、南極大陸を除くすべての大陸に生息し、数百の島嶼(島)にも移入され、地球上で最も広く分布している種の一つです。
ネコの特徴といえば動物食に特化していることも挙げられます。
アミノ酸代謝の酵素を調整する機能が限定的なネコは、アミノ酸やビタミンへの変換に植物食を利用することができません。
ですので、高タンパクの動物食に強く依存しており、常に高エネルギーを補給しなくてはいけないのです。
侵略的外来種
そして、今世界中で環境破壊の問題として考えられている種でもあります。
IUCN(国際自然保護連合)の発表している【世界の侵略的外来種ワースト100】にも指定されています。
そして、環境省や農林水産省の発表している【我が国の生態系等に被害を及ぼす恐れのある外来種リスト】にもリスト入りしており
その中で、緊急対策外来種に指定されています。
これは、総合的に対策が必要な外来種、かつ特に緊急性が高く積極的に防除を行う必要があるという意味です。
このように、世界的にも日本国内でも、問題視されているのが放し飼いのネコなのです。
外来種被害防止行動計画
ここで一つお伝えしたいのが、国の出している「外来種被害防止行動計画」についてです。
この中で、被害が顕著化する前に対応をする方が、生態系などに与える影響も少なく、駆除等に必要な個体数も最小限に抑えることができる。と言われています。
「駆除するのはかわいそう」という意見が多いと思うのですが、早めの対応がネコのためにも大切だということです。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください!
研究結果
さて、では研究の結果を見ていきましょう。
最初にご紹介したように、今回の研究は過去に行われた、膨大な研究や調査を一つにまとめることが目的です。
その過程で、ネコが生態系に与える被害や、今後の課題などが浮き彫りになってきました。
ネコが食べているもの
世界中の調査結果を見てみると、なんと2,084種がネコに食べられていることがわかりました。
その内訳は
- 鳥類47.07%(981種)
- 爬虫類22.22%(463種)
- 哺乳類20.68%(431種)
- 昆虫類5.71%(119種)
- 両生類2.74%(57種)
- その他1.58%(33種)
このような結果になりました。
(鳥が多い?!)
鳥類、爬虫類、哺乳類で消費される餌の90%を占めています。
そのうち、347種(16.65%)が絶滅危惧種などの保全上の懸念種でした。
懸念種だけでみると、特に島嶼には大陸と比べ約3倍の懸念種が含まれていました。
この研究から見えてきたもの
いくつかこの研究で見えてきたものがあります。
この記事では、その中でも私が気になった部分をピックアップして紹介してみようと思います。
1、研究の地域に偏りがある
膨大な論文などを調べた結果、オーストラリアや北アメリカ、そして希少種の生息する島嶼に研究が偏っていることがわかりました。
アフリカ、ユーラシアの一部、南アメリカなどでは、ネコの問題が過小評価されているのです。
このような地域が、生物多様性の高い地域であることを考えると、もっと研究が実施されれば、より多くの保全上の懸念種がリストアップされるだろうとこの論文には記載されています。
2、無脊椎動物の学者の関与がほとんどない
鳥類や爬虫類、そして哺乳類が多いというデータが出ていましたが、これらは積極的に調べられた形跡があります。
一方、昆虫類などの無脊椎動物に関しては【その他】という扱いになっていることも多かったとか。
また、昆虫の専門家だからこそ見逃さないような痕跡を見逃しているかもしれません。
無脊椎動物の学者の関与が低いにも関わらず、ネコの食事中に比較的多くの昆虫が確認できていることも指摘されていました。
3、そもそも哺乳類より鳥類の種数が多い
哺乳類は世界に約6,000種が確認されています。
一方、鳥類は約9,000種が確認されています。
しかも、ネコが捕食できるサイズ(小さい)の哺乳類となると、もっと数は限定されます。
このような理由から、哺乳類の数が少なくなる傾向は当然といえば当然だというのです。
4、爬虫類の検出可能性が低い
分析した研究の多くが、ネコの糞を調べて内容物から餌を割り出すという方法でした。
そうなると、鳥類や哺乳類の骨など、糞として排出しやすいものが目立つのは当然です。
爬虫類、両生類、昆虫類などの痕跡が見つけにくいということを考えると、ネコの食事を十分に評価できていないという問題点が見えてきました。
この結果から考えられること
多くの研究データをまとめていくうちに、ネコがどのような食事をとっているのかが少しずつわかってきました。
ネコは、採餌する環境に存在する大部分の種を捕食している可能性が高いということです。
なぜなら、ネコがごく一部の鳥類や哺乳類を好んで捕食しているという兆候が見られないこと。
そして、鳥類・哺乳類以外の種に関してはデータが不十分なこと。
これらの要因から、入手可能なあらゆる種を捕食し、食べる目的以外でも襲っている可能性が示唆されたのです。
日本の場合(奄美大島)
日本では、奄美大島のネコ問題が有名です。
奄美大島は、アマミヤマシギやオオトラツグミ、ルリカケスなど多くの日本固有種や希少な在来種が生息しています。
1980年代以降は、マングースの被害が大きかったのですが、近年はマングース対策が功を奏し減少しました。
しかし、近年ネコによる被害が増え、森林内での繁殖や希少種の捕食など、新たな課題として問題視されています。
ネコは外来種
元々、奄美大島には肉食性の哺乳類は生息していませんでした。
しかし、猛毒を持つハブや穀物への被害を与えるネズミ対策のために人為的に持ち込まれ、放し飼いにされてきた経緯があります。
※このネズミなんかも日本固有種で希少だったりするのですが…
このような経緯から、島民の間でも飼い猫は放し飼いという意識が今でも強く残っているといいます。
そうこうしていると、放し飼いネコが野外繁殖を行い、いわゆる野良猫が増えたと考えられているのです。
こう書くと「人の都合で持ち込んで、人の都合で邪魔者扱いをして無責任だ」という意見もあります。
もちろんそれはその通りです。
人が身勝手に放し飼いをし、増えて生態系への被害がひどくなると駆除する。
本当に酷い話だと思います。
しかし、この負の連鎖はどこかで止めなければいけないのです。
このまま、ネコが増え続けると、今生きているネコの子の世代、孫の世代、そのまた孫の世代まで
本当に多くのネコの命を奪うことになってしまいます。
生態系を守るのは、希少な種を守るだけでなく、人間もネコも住み良い環境を守るためだという事を忘れてはいけません。
最後に
奄美大島のケースでは、国・鹿児島県・市町村の三位一体でこの問題に取り組んでいます。
絶対にノネコを減らす。完全に室内で飼育するという強いメッセージを発信しています。
【動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)】や【飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例】など
ネコを放し飼いにしない!それが今を生きる現代人に求められているマナーです。
何も、ペットとして飼うことを禁止しているわけではありません。
自然への影響、他人への影響、生き物への影響に配慮していこうということです。
そして、奄美大島だけの問題ではなく、世界的に実施していかなくてはいけない課題です。
もちろん、日本列島のすべての地域で、放し飼いのネコを減らしていかなければいけません。
ネコは絶対に放し飼いにしない、そして野良猫に餌やりはしない。
ネコと人間の明るい未来のために、考えていかなきゃいけない問題なのです。
ではまた次回。
【参考文献】
・Christopher A. Lepczyk, Jean E. Fantle-Lepczyk, Kylee D. Dunham, Elsa Bonnaud, Jocelyn Lindner, Tim S. Doherty & John C. Z. Woinarski (2023) A global synthesis and assessment of free-ranging domestic cat diet./ Nat Commun 14, 7809
・環境省那覇自然環境事務所・鹿児島県・奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町 / 奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(2018年〜2027年)
・石井信夫・山田文雄・諸坂佐利・長嶺隆・伊藤圭子(2019) わが国の島嶼における外来ネコ対策への支援と普及啓発の2年目の活動 / 自然保護助成基金助成成果報告書 28: 161-166
・環境省 我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト
私は神戸在住のバードウォッチャーで、啓蒙活動もやっています。
近くの森林公園で水場にやってくる野鳥を狩るためにノネコが潜んでいるのを何度か見かけています。何十年も前に犬が放し飼いを規制されているのと比べられないほど、ノネコが放置されている現状に憂えています。
神戸市在住ですが、条例はエサやりを規制していません。TVでは「世界ネコ歩き」と言う番組もあるし、日本ではノネコへの認知が相当低いですね。
このようなサイトを見つけ、うれしい限りです。
松岡さま。
コメントありがとうございます。
ノネコ問題は、特に我々のような野鳥界隈では悩みの種ですよね。
私も、日々心を痛めております。
松岡さまのおっしゃるように、地域猫運動との兼ね合いで餌やりがあたかもOKのような誤解も散見します。
それに、テレビの影響も大きいです。
私も微力ですが、少しでも多くの人に知って欲しいという思いで、サイト運営と記事の執筆をしています。
そして、今年4月には、野鳥の本を出版することになりました。
その書籍の中でも、編集者の方にお願いして、絶滅危惧種や外来種や保護活動などの情報も掲載させていただきました。
少しでも理解の輪が広がっていきますよう、努力していくしかないと考えています。
ありがとうございます。