最近、野鳥に関するこんなニュースが話題になりました。
フクロウの赤ちゃんがゴルフ場で見つかったというのです。
このニュースを受け、野鳥界がざわざわとなっています(汗)
というのも、落ちている野鳥を拾わないということは、野鳥観察者の中では常識だからです。
しかし、この記事の件では、ゴルファーが赤ちゃんを保護し、施設に保護されたのだとか。
また、別の同じようなニュースもあります。
この2件のニュースに共通しているのは、フクロウを保護したことが良い事と思われていることです。
一般の方にはわからないことかも知れませんが、この保護という行為は必ずしも良いことではないのです。
その理由を是非知っていただき、野鳥に限らず
野生の生き物に気軽に接触するということを控えてもらいたいなと思います。
目次
落ちている雛
一番最初の記事にも少し話が出てきていましたが
野鳥は、生まれて数ヶ月で飛ぶ練習をはじめます。
生まれて初めて巣から外に飛び出して、すぐに自由に大空を飛び回れる訳ではありません。
そのため、一生懸命練習して、飛び方をマスターする必要があります。
また、一般的な野鳥は飛びはじめてからも、餌を取る練習をしたり、親と別行動をしたり。
一人前に生きていくために、たくさんの経験をしながら生きていくのです。
つまり、雛が落ちているということは、もしかしたら生きていく過程で必要な場面かもしれません。
そんな風に、失敗することで成長している過程なのかもしれないのです。
野鳥を拾ってはいけない理由
1、親の管理下にいる
親が殺されて取り残された場合などを除き、独り立ちする前の雛のそばには必ず親がいます。
もし、一人でいるように見えても、餌を取りに行っているだけかもしれません。
それに、遠くで様子を伺っているのかもしれません。
そこに、人間がやってきて勝手に持ち帰ったり、ヒナに近寄って動画を撮っていたりするとどうでしょう?
親鳥はすごく困ってしまいますよね?
自転車の練習をしていて、転んだ息子が、少し目を離した途端に他人に連れていかれるようなものです。
『かわいそうだったから』と言われても、勝手に何やってるんだよ!って鼻息が荒くなってしまいます。
失敗して、子供は強くなる。そんな場面も必要なのです。
2、野鳥が抱える感染症
野生の動物が、人間の目の見える場所に落ちていると言うのは滅多にあることではありません。
ですので、もしかしたら普通じゃないことが起きているかもしれません。
つまり、その雛は何かの病気にかかっていて、親にも見捨てられたのかもしれません。
実際に、弱っている野鳥が鳥インフルエンザに感染しているという報告は多くあります。
(現状、人間には感染しないと言われていますが、ウイルスはいつ変異するかわかりません)
また、新型コロナウイルスも、コウモリ由来のウイルスで、人間とコウモリの接触により人間に感染したとも考えられています。
このように、野生の生き物はどんな未知の病原体を持っているかわかりません。
ですので、自己判断で野生動物に触れることはとてもリスクのある行為です。
人間が生活環境を広げたことにより、野生動物の生活環境が狭くなってしまっています。
そのため、野生動物と人間の接触が増えているという現実があります。
前述のゴルフ場にいたフクロウも、ゴルフ場という人間の環境に迷い込んだ野生動物です。
この接触が、人にも野生動物にも感染症のリスクを高めているのです。
3、野鳥の世界は弱肉強食の世界
先ほどの2つ目の記事では、50羽のカラスにフクロウが襲われていたとなっています。
この記事の書き方では、あたかもカラスが悪者でフクロウが被害者のように感じてしまいます。
しかし、カラスは何も意地悪でフクロウをいじめているわけではありません。
カラスも生きていくために必死です。
毎朝、せっせと人間の出したゴミ袋を漁っているのも、人間に嫌がらせをするためではありません。
毎日毎日、その日のご飯を食べるために必死に生きているのです。
そんな中、フクロウの雛が落ちているというのは、カラスにとっても幸運なのです。
何日も食べ物にあり付けづに、やっとの思いで見つけたラーメン屋のようなものです。
ラーメン屋に入ろうとした矢先、コラー!ラーメン屋を襲うなー!と怒鳴られるようなものです。
そのフクロウのことを考えれば、命を失いかわいそうにも思います。
しかし、野生動物の世界は弱肉強食、持ちつ持たれつ、命の連鎖の上で成り立っています。
逆の見方をすれば、フクロウを助ける行為はカラスを苦しめる行為になってしまうかもしれないのです。
YouTube に多くの動画が
野生動物が落ちていた!って関連の動画は、YouTubeなんかにめちゃくちゃ多く上がっています。
その多くが、一般の方がスマホ片手に、その野生動物に近づいて撮影している動画です。
時にはその動物を触ってみる場面も写っていたりします。
しかし、その行為がどれだけ危険で、その生き物を傷つけているのか知らない人がほとんどです。
人間の思い込みが野鳥を苦しめる
野鳥を保護している施設を見に行ったことはありますか?
自由に大空を飛べる鳥類に生まれながら、狭いケージに入れられて暮らしている鳥たち。
そのケージの前には、いつどこでどんな理由で保護され、なぜこのケージに入っているのかが書いてあります。
2022年2月14日、〇〇ゴルフ場にて、生後1ヶ月のフクロウが落ちているのを発見され保護される。
保護半年が経っているが、人間に慣れてしまっているので、野生で生きていけない可能性があるため飼育中。
このようなエピソードが、一匹一匹についているのです。
どう思いますか?
人間が保護することが必ずしも正しいことではないのです。
人に保護された野生動物は、野生に帰る力を失うものも多くいます。
ヒトと関わってしまったことで、本来の野鳥としての生き方ができなくなってしまうのです。
保護した人を責めないで
ここまで、野生動物を保護してはいけない理由を書いてきました。
もちろん、専門家の方が生態系を守るためだとか研究のために保護するというのは別の話です。
今回の記事の対象は、あくまで一般の方が自分の判断で保護するというお話です。
しかし、そういった方達を責めないでほしいと思います。
多くの方が、善意で野生動物を保護していると思います。
しかし、それはこういった事実を知らないだけなのです。
ですので、是非このことを多くの人に知ってもらえるように教えてほしいのです。
知らない人に教えていって、こういった認識を広げていけたら良いなと思います。
保護した人が身近にいれば、ぜひ話してみてください。
子供が野生動物を拾ってきたら、ぜひ教えてあげてください。
野生動物との、いい意味で距離を置いた暮らしを送ることで
人間の動物も平和に暮らしていくことができます。
正しい理解がなされないまま、野生動物と接点が生まれることが
多くの悲劇を生んでいるということを理解していただきたいなと思っています。
ひなを拾わないでキャンペーン
現在、公益法人日本鳥類保護連盟が【ひなを拾わないでキャンペーン】を行なっています。
このキャンペーンは、日本鳥類保護連盟が中心となり、日本野鳥の会や野生動物救護獣医師協会などが
環境省の後援のもと行なっている啓蒙キャンペーンです。
キャンペーンポスターを、自治体や学校などに配布し、広く認識を広げてもらいたいという活動です。
2022年4月1日〜7月31日までキャンペーンを行なっており
もし、野鳥の雛が落ちていたらどう対処したら良いのかを説明しています。
この機会に、多くの方にこの事実を知っていただければ幸いです。
下記リンクよりキャンペーンページに飛べます!!
ではまた次回
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