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【伝統色とトリノイロ】オナガ

目次

オナガ


黒い帽子をかぶったような頭はとてもキュート!
体の上面と胸からおなかにかけては柔らかなグレーで素敵。
そして何より美しいのは、その翼と尾羽のブルーです。
深みがありながら優しくさわやかな水色は、はじめて見た誰もを感動させる美しさです。

オナガは、中部以北の本州に局地的にみられる鳥です。
山地や農耕地のほか、住宅地にもいて、関東の方にはお馴染みの鳥かもしれません。
逆に、中部以南では見られないため、「見てみたい!!」という憧れの鳥である場合も多いですね。

この美しいオナガの青を表現する伝統色は…といろいろ考え、選んだのが「勿忘草色」です。

実は、この勿忘草色をチョイスするにあたって少し悩みました。
なぜならば、この勿忘草色というのはわりと新しい色だからです。

伝統色シリーズとしてふさわしいのか?

しかし、オナガのあの美しい水色を表現するには「勿忘草色」がぴったりだ!と思い決定しました。

勿忘草色は、ワスレナグサの花弁のはかなげなブルーから名づけられた色です。
やや紫色も感じる、明るい水色でオナガの青を表現するのにぴったりな色!

ワスレナグサは、現在あちこちに自生していて日本に昔からあった植物だと思っている方も多いかもしれません。
しかし、このワスレナグサが日本に入ってきたのは明治時代とわりと最近なのです!
つまり、先述しましたが「勿忘草色」というのも明治時代に生まれた色だというわけ。

ヨーロッパの伝説で、ドイツの騎士ルドルフさんが恋人のために花をつもうとして足を滑らせてドナウ川に落ちてなくなった…という悲しいものがあるそうです。
この時、ルドルフが「Vergissmeinnicht(私を忘れないで)」と言ったそうで、残された恋人はこの花を髪に飾り続けたといわれています。
実際のところ、この伝説が先なのか花の名前が先なのかははっきりとしないようです。
控えめで少し寂し気に咲くこの青い花のイメージから生まれた物語かもしれませんね。

この物語を知ると、なんだかオナガのけたたましい鳴き声も少し物悲しく聞こえそうです。笑

ワスレナグサの英名は「Forget me not」です。

日本名の「ワスレナグサ」は、明治時代につけられたと言われています。

一説ではありますが…。

私の大好きな上田敏の訳詩集「海潮音」の中で、上田敏がドイツの詩人Wilhelm Arentの詩 「Vergissmeinnicht」(例の伝説をモチーフにしたもの)を日本語訳した際に「勿忘草(わすれなぐさ)」と訳したのが最初であるとか。

それが本当であるとするならば「私を忘れないで」と訳しそうなところを「わすれなぐさ」と訳した上田敏のセンスは素敵だなと感じます。
(詩も、短いけれどとても美しい詩ですよ)

ちなみに、このドイツの詩人Wilhelm Arentは、本国ドイツでは今では忘れられた詩人であるらしいという話も聞きました。
しかし、遠く離れた日本で、今なお愛され続けている訳詩集「海潮音」。
その中で「Vergissmeinnicht」は、素晴らしい上田敏の訳にて生き続けていることを思うとなんだかぐっときます。

*伝統色シリーズ
鳥の色は、図鑑や書籍などで端的に表現される場合がほとんどです。
しかし日本には、たくさんの色名が存在します。
「もっとこんな表現はどうかな?」「こっちの色が近い気がするな」そんな気持ちを素敵な日本の伝統色を紹介しながら綴るシリーズです。

*記載の色は色名に対する近似値(おおよそのもの)です。
文献や書籍によって解釈が異なる場合もございます。
またお使いのモニターや端末によって色が違って見えることもあります!

<参考文献>
美しい日本の伝統色 / PIE international / 
日本の色辞典 / 紫紅社
語源由来辞典 語源由来辞典 (gogen-yurai.jp)

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