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動物の絶滅をなぜ食い止めねばならないのか?【人間絶滅】

絶滅危惧種を何故守る必要があるのでしょうか?
この問いにキチンと答えられる人はそんなに多くはないと思います。

『可哀想だから』そう答える人もいるのではないでしょうか。
しかし、この問題はそんなに簡単なことではありません。

先日、コウノトリの保護活動の現場を見てきました。
コウノトリを守るために、様々な活動が行われています。

しかし、一方で、なぜコウノトリを守る必要があるの?
自然淘汰で絶滅する生き物が出るのはしょうがないことなのでは?
このような意見があることも事実です。

特定外来種の問題や環境破壊の問題など、近年の生態系を取り巻く様々な問題の根幹に関わる部分。
なぜ、絶滅危惧種を守っていかないといけないのか?

今回の記事は、出来るだけわかりやすくこの問題を解説していきます。

目次

絶滅危惧種を守るということ

IUCN(国際自然保護連合)が2019年に公表した最新版のレッドリスト(絶滅の危険のある生物リスト)によると
検証した10万5,732種の内、絶滅の危機に瀕している種は28,338種と公表されています。

これは、地球上に住む生物の約27%に及ぶ数です。
※人間の現在把握し検証した範囲での話です。

WWF2019年レッドリストの記事

また、日本では環境省が公表するレッドリストがあり。
2020年の最新版では3,716種が絶滅危惧種として公表されています。

環境省レッドリスト

しかし、このデータは生態系の危険度を正確に反映しているとはいえません。
人間の検証した範囲は、全ての生物に及ぶわけではありませんし、正直わかっていないことも多いのです。

では何故?絶滅危惧種がこうも問題視されるのでしょうか?
絶滅する動物が出ると何が問題なのでしょうか?

自然淘汰

自然界は弱肉強食、弱い生き物は数を減らし強い生き物が数を増やす。そんなの当たり前じゃないか!
そう思う人も多くいるのではないでしょうか?

自然の摂理で数を減らしているのだから、人間の身勝手で絶滅危惧種を守る活動なんてしない方がいい。
そういうふうに考える人もいるかもしれません。

事実、自然界は残酷なもので、弱い生き物は繁栄できません。
しかし、自然界というのはそんなに単純な仕組みではできていないのです。

一見、弱肉強食で種を存続させるサバイバルを戦い抜いているように見えますが
どの種も、自然界では役割を持っていて、食べることも食べられることも自然界をうまく機能させるために役立っているのです。
つまり、草食動物は肉食動物に食べられることで生態系を守っているという見方もできます。

逆に、肉食動物が暴挙のかぎりを尽くし、餌である草食動物を食べ尽くしてしまうと
自分達の食物がなくなってしまい生きていくことはできません。
ですので、単純に強いものが生き弱いものが滅びるという世界観では、この地球の生態系は成り立っていかないのです。

生物多様性

ハヤブサの写真
ハヤブサ絶滅危惧2類

どんな生物も一人で生きていくことはできません。

そもそも、食べ物があってはじめて生きていけますし、花と蜂の様に共生関係もあります。
また、太陽の光や夜の闇、風や水など、生物以外の環境も生きていく上では大切になってきます。
このように、生物や環境がお互いに関係しあって成り立っていることを生態系と呼びます。

その為、どんな生物でもこの生態系が安定して存続し続けることが大切になってきます。
それは、人間も例外ではありません。

例えば、地球上に暑さに弱い植物しかいないと想像してみてください。
近年話題の地球温暖化が進むと、地球上の植物は全滅してしまいます。
そうすると、それを食べている草食動物も絶滅しますし、さらに肉食動物も絶滅してしまいます。

ですので、暑さに強い植物もいた方がいいに決まっています。

また、花の蜜を食べる生き物が蜂しかいないと想像してみてください。
蜂が何かの理由で絶滅すると、花も花粉を運んでもらえずに絶滅してしまいます。

ですので、花からしてみれば蜜を好む生き物は多い方がありがたいのです。
事実、花の蜜を好む生き物は、蝶々など昆虫以外にも鳥類や哺乳類など様々です。

生物が絶滅しないシステム冗長性

この様に、生態系の中では同じような役割を持っているけど違う特徴を持った種が存在しています。
これを生態系の冗長性(じょうちょうせい)と呼びます。

冗長性とは【余分なもの・余剰がある・重複している】といった意味です。
一見無駄に思う様なことですが、何か問題が生じても生態系の機能が維持していけるようになっているのです。
自然が簡単には崩壊しないためのバックアッププログラムのようなものですね。

この冗長性も含め、多くの種類の生物が存在していることを【生物多様性】と呼びます。

ちなみに、生物多様性には【種内の多様性・種の多様性・生態系の多様性】と3種類あります。

人間も色々な個性があった方がいいよね!
色々な種が多様にいた方がいいよね!
様々な環境での生態系が存在した方がいいよね!

この様な多岐にわたる多様性が、地球という大きな環境を長く継続していくには大切なのです。

今回、新型コロナウイルスのパンデミックが起きました。
もし、人間が単一民族だったとして、その民族がコロナに弱かったとします。
もう人類は滅亡していましたよね。
しかし、実際は多種多様な民族が地球上には存在し、種内の多様性が保たれているからこそ、こうした危機も乗り越えられるのです。

絶滅危惧種が増えているということは、地球上の生物多様性が失われていっているということなのです。

なぜ絶滅危惧種は増え続けるのか?

ノジコの写真
ノジコ準絶滅危惧種

環境省の発表した2020年レッドリストは、2019年版に比べ絶滅危惧種が40種増加しました。
もちろん調査方法などもあるので一様にはいえませんが、一年で40種増えるというのは普通ではありません。

生物多様性を考えると、自然界は弱肉強食で弱い種を篩(ふるい)にかけたいのではなく、多種多様な生物を育みたいはずです。
そうすることで、約40億年もの間、生物は地球で生存し続けてきたのですから。

ではなぜ絶滅危惧種は増え続けているのでしょうか?

それは人間のせいです。

長い年月をかけて生物多様性は育まれてきました。
しかし、人間が大きな力を持ち、その多様性を傍若無人に壊してきました。

生物多様性の高い森林や湿地を壊し、生物多様性の低い農地などを大量に作ってきました。
広い海の中でも特に生物多様性の高い浅瀬や干潟を、人間は埋め立て工業地や商業地にしてきました。

この様に、人間は地球を人間の住みやすい環境に改造してきたのです。
その為、人間とっては都合の良い環境でも、生物多様性が失われ、多くの絶滅危惧種を産むことになったのです。

ここまで読んでいただいて、もうお気づきだと思います。
絶滅危惧種を守っていかねばならないのは、生物多様性を守る為です。
それは、地球の自然環境を守ることでもありますし、人間の未来を守るということでもあります。

人間は気づき始めている

1971年には世界の湿地を守るため、ラムサール条約が制定されました。
また、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議で生物多様性条約が採択されました。

この様に、過去の過ちを改め、自然環境を守っていこうという試みは世界中で見られます。

しかし、これはあくまで、人間は気づき始めているという段階の様に思います。
その証拠に、現在も絶滅危惧種は増え続けていますし、環境破壊は急速な勢いで続いています。

人間も生き物ですから、繁栄したいという本能には抗えません。
頭では生物多様性の重要性に気づいていても、実行するということはまた別問題です。
また、生物学者など一部の人間には常識でも、政財界や経済界、その他の一般人にまでこの考えが浸透しているとは思えません。

自然界での人間の役割

クロツラヘラサギの写真
クロツラヘラサギ絶滅危惧1類

先ほど、生態系の中ではそれぞれの種が役割を担って生きていると書きました。
では、人間の役割とは何なのでしょうか?
今のまま、ただ自然を好き勝手に壊すことが、人間の本来の姿なのでしょうか?

人間は、長い年月をかけて知能(知恵)を発達させてきました。
そのお陰で、医療は発達し長生きできる様になり、住みやすい環境を整え、繁栄してきました。

私は、これからの未来、その知恵を自然界のために使うことが人間の役割じゃないかと考えています。

人間の人口はすごい勢いで増えています。
それに伴い、人間活動は勢いを増し、環境破壊は今もなお拡がっていっています。
しかし、このままでは人間も自然界も共倒れです。

だからと言って、人間の数を減らそう!などという考えはまた極端だと思います。

長年、科学を進歩させてきた人間は、今こそその知恵を自然界のために使うときじゃないでしょうか?
それは、科学者や生物学者だけでなく、我々一般人も含めて、知恵を出し合い協力していく。

絶滅危惧種を守っていくことは、環境を破壊してきた人間の責任でもありますし
地球の生物多様性を守る、つまり我々人間のためでもあるのです。

絶滅危惧種は数が減って可哀想だから救うのではありません。
地球の生物多様性を守るため、我々人間に課せられた重要なミッションでもあると思うのです。

ではまた次回

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