コンテンツへスキップ
ホーム » 野鳥と自然を楽しむブログ » 外来種は何が問題?

外来種は何が問題?

先日、東北地方の某有名高原へ野鳥観察に出かけました。
その高原は、重要野鳥生息地として国際的に認められているほどの人気野鳥スポットです。

もちろん野鳥観察が一番の目的だったのですが、3泊4日の奮発旅行!
始めていく土地の光景や城下町など、旅としてとても楽しみにしていました。

しかし、私はとても悲しい光景を目にしたのです。

街には、有名コンビニや有名チェーン店が立ち並び
高原には、全国どの高原にもあるような汎用ソフトクリーム屋やカフェが乱立
なぜかどこにでもあるオルゴール館も健在で
湖では、ブラックバス釣りが人気!もはや観光事業化されています。

せっかく、我が家から車で4時間以上かけてお出かけしたのに
そこには、そこにしか無い魅力というものが希薄だったのです。

目次

外来種は何が問題?

先ほど出てきたブラックバスは、日本人にとって一番知名度の高い外来生物ではないでしょうか?
ブラックバスを駆除しよう!全国の自治体はそう呼びかけていますよね。

しかし、具体的に何が問題なのか?と問われると答えにくい問題でもあるのではないでしょうか?
実際に、駆除推進の役所に、ブラックバス釣り愛好家を中心とした反対派が意見したりって事もあります。

また、身近にいるあんな種も、こんな種も、実は特定外来生物に指定されていたりもします。
さらに、あなたが日頃可愛がっているあの生き物は、実は緊急対策外来種に指定されているのです。

今回の記事は、そんな外来種問題をできるだけわかりやすく解説してみようと思います。

外来種とは?

カオジロガビチョウの写真
外来種カオジロガビチョウ

外来種って言葉はよく聞くと思いますが、明確な定義があります。
単純に、外から入ってきた危険な奴ら!って意味ではありません。

国際自然保護連合によると「過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種。
あるいはそれ以下の分類群を指し、生存し繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含むもの」と定義されています。

ちょっと難しく聞こえますが【もともと、その地域にいなかったのに人為的に他の地域から入って来た生物】ということです。

ここで注目しておきたいのが、人為的に入って来たという箇所と、危険な奴らという記述がないことです。
先ほど【外から入って来た危険な奴ら】ではないと書きましたが、この認識が全く違うということが分かると思います。
外から入ってきたのではなく人為的に導入された、危険な奴らではなくその全ての種を指すわけです。

また、外という漢字が入っていることから、外国から入って来たと思いがちなのですが
国内間でも、例えば九州にしか生息していなかった生物が、北海道に定着したと言った場合、外来種と呼ばれます。

外来種にも種類がある

海外から人為的に入って来た外来種を、国外由来の外来種と呼んでいます。
逆に、国内の異なる地域から人為的に入って来た外来種は、国内由来の外来種と呼びます。

更に、そんな外来種の中でも、生態系や人の健康、また農林水産業などに被害を及ぼすものを【侵略的外来種】と呼んでいます。
つまり、外来種と言っても、全てが危険というわけではないのです。

また、侵略的外来種の中でも、細かく危険度などを評価し3つのカテゴリに区分されています。

1、総合対策外来種

国内に定着し、生態系や人の健康、また農林水産業に影響を及ぼしている、また及ぼす恐れがある。
その為、駆除・持ち込み・持ち出しなどの総合的な対策を必要をする外来種。

このカテゴリは、すでに定着してしまった侵略的外来種を指しています。
その中でも危険度わけされていて【緊急対策外来種・重点対策外来種・その他の対策外来種】など分けられています。

2、産業管理外来種

産業または公益性において重要で、替えが効かず、その利用にあたっては適切な管理が必要な外来種。

例えは、養殖されている外来種の魚など、生態系に影響が出ていても産業などの観点から排除できない理由のある外来種です。
適切な管理をしないといけないのですが、この管理に明確な基準がないのが問題視されています。

3、定着予防外来種

国内に定着は確認されていないが、定着した場合に生態系などへの被害が予想されている外来種。
定着する前に、様々な防止策を講じ、発見した場合の早期駆除が必要。

この様に細かく分類されています。

外来種はなぜ強いの?

オオブタクサの写真
全国的に被害を及ぼしているオオブタクサ

先ほどから【定着】という言葉を使っていますが、実は全ての外来種が国内に定着できるわけではありません。
なぜなら、元々いた環境と違う環境に適応するというのは簡単なことではないからです。

理由その1、環境による選択を受け、定着に成功している

気候の違いや、天敵への免疫力など、定着するには様々なハードルを突破しなくてはならないのです。
外来種と言っても、在来種との遭遇は初めてなわけですから、強い敵に出くわすと簡単にやられてしまいます。

しかし、その難関を突破してくるものが必ず現れます。
そんな優秀な外来種は、先ほど紹介した侵略的外来種に分類されることとなります。
その為、外来種=強いというイメージが湧いてくるのです。

理由その2、生態系的に解放された存在である

また、元々いた環境では、必ずその種にも天敵がいたはずです。
生産者→消費者→分解者→生産者と生態系のサイクルはバランス良く回っています。
どんな生物でも、必ずそのバランスの中に自分の居場所を持っているのです。

しかし、外からやってきた外来種にとって、新しい環境は解放された新天地です。
気候も良い、天敵もいないとなれば、彼らを止める術はありません。
つまり、その種にとって天敵となる種がいないということです。

理由その3、在来種との進化の歴史を共有していない

また、先ほど外来種にとって在来種は脅威と書きましたが、在来種目線でも外来種は脅威です。
長い年月をかけ、生態系のバランスの中で仲良くやっていた在来種メンバー達。
しかし、突如やってきた外来種。
初めて会う外来種にはなんの対策手段も持っていません。

このような理由で、外来種は問題視されているのです。

外来生物法

ブラックバス

外来種と一言で言っても、様々な種類があることがわかったと思います。
その中でも特に生態系への影響が深刻な種を、侵略的外来種と呼ぶと書きました。

そんな侵略的外来種の中でも、人が飼育・栽培・運搬・輸入・野外への放出・他人への受け渡しなどが法律で禁止されている外来種がいます。
それを【特定外来生物】と呼びます。

この特定外来生物は、外来生物法という法律で、厳しく規制されている外来種です。
違反すると、懲役1〜3年、罰金100〜300万円などのとても重い罰則があります。

例えば、ブラックバスはこの特定外来生物に指定されている魚です。
ですので、湖沼で釣ったブラックバスの扱いには細心の注意が必要です。
持ち帰って飼育したり、バケツに入れて運んだり、どこかへリリースしたり
ついやってしまいがちな行動も、見つかれば重い罰則の対象になるかもしれないのです。

身近な外来種

では、環境省の発表しているリストを見ながら、身近な外来種について見ていきたいと思います。
具体的なリストは下記URLを見てもらいたいのですが、私がピックアップした種をいくつかご紹介したいと思います。

生態系被害防止外来種リスト 環境省

ブラックバス

緊急対策外来種 特定外来生物

一般的にはブラックバスと呼ばれていますが、細かくいうとコクチバスとオオクチバスがいます。
食用・釣り対象魚として神奈川県で放流されたのが始まりと言われています。
現在では、全国47都道府県に進出しており、深刻な生態系への被害が起きている種です。

カミツキガメ

緊急対策外来種 特定外来生物

日本にはペット用として持ち込まれ、後に野外に放たれたものが野生化したと考えられています。
千葉県の印旛沼での定着が有名ですが、徐々に他のエリアでの確認も増えている種です。
旺盛な食欲から在来種への被害が起きていますし、人を噛むなどの被害も心配されています。

ウシガエル

重点対策外来種 特定外来生物

食用として世界中に広がったことから、食用ガエルの呼び名でも知られる外来種。
日本にも食用として輸入され、逃げたウシガエルが野生化したと考えられています。
日本のみならず、世界中で猛威を振るっており、世界の侵略的外来種ワースト100にも入っています。

野猫

緊急対策外来種

ペットとして飼われていた猫が捨てられ、野生化したいわゆる野良猫です。
意外かもしれませんが、野良猫は総合対策外来種の中でも一番危険度の高い緊急対策外来種に指定されています。
野良猫への餌やりは、もう一度考え直したい身近な問題だと思います。
野鳥を襲う野良猫なだけに、私は個人的に気になっている存在です。

ガビチョウ

重点対策外来種 特定外来生物

野鳥界ではお馴染みの身近な外来種です。
同種にはカオジロガビチョウやカオグロガビチョウなどもいて、全て侵略的外来種として認定されています。
鳥類学者の川上和人さんの研究では、在来野鳥への影響は確認されなかったらしいのですが
生物多様性・生態系の多様性の観点からも無視はできないのが外来種問題です。

ニジマス

産業管理外来種 

全国に広く分布し、現在では在来種のような顔をして河川を泳いでいるニジマス。
このニジマスも、立派な外来種で、在来種への破壊的な侵略で知られています。
しかし、現在ではニジマスの養殖業や日本人の食文化への浸透(お寿司のサーモンの代替え魚)などもあり
簡単に駆除ができないのがこの種の悩みの種です。
しかし、知識のない放流などが度々問題になるなど、対応を考えていかないといけない種だと思います。

オオキンケイギク

緊急対策外来種 特定外来生物

最後にご紹介するのはキク科の植物オオキンケイギクです。
名前を聞いたことのない方は是非一度その姿を見ていただきたいなと思います。

Wikipedia オオキンケイギク

めちゃくちゃよく見ますよね!!この花も深刻な被害を及ぼしている侵略的外来種です。
元々は観賞用に輸入され、公園などに植樹されたりしていました。

どの種もそうですが、最初はその被害なんて予想はできなかったと思います。
しかし、いろいろな問題がわかって来たからこそ、未来のために外来種を増やさないという取り組みが必要だと思います。

生態系の単純化

今回は外来種の問題について分かりやすく解説しようと努めました。
しかし、この問題は本当に複雑な問題なので、今回の記事では記述しきれていない部分もあります。

生態系へのダメージも本当に深刻な問題だと思います。
しかし、外来種が日本・世界中に広がってしまうことで、生物の地域個体差がなくなってしまうという問題もあります。

日本の固有種であるゲンゴロウブナ(絶滅危惧1類)がブラックバスによって殲滅されてしますと
島国として長い間育まれてきた日本独自の生態系が消えてしまいます。

以前、絶滅危惧種をなぜ守らないといけないのか?って記事でご紹介したように
世界中にいろいろな環境があり、その環境に応じていろいろな生物が繁栄している
そういった生物の多様性が、地球の環境を守っていく上ではすごく重要なのです。

日本国内だけを考えても、全国どの湖沼にもブラックバスとブルーギルと鯉しかいないという状況は問題です。
ウシガエルのいる水域では、他のカエルの姿が消えたという研究結果も出ています。

つまり、外来種問題を放置していると、全国どこも同じような生物しかいないという状況が生まれるかもしれないのです。

多様性を理解し守ろう

最初に書いた某高原旅行のことを思い出してください。

コンビニがどこにでもあるのは便利です。
有名チェーン店がずらっと揃っていることは地元の人も嬉しいことだと思います。
また、大型ショッピングモールができることも嬉しいでしょう。

しかし、そんな状況が進んでいってしまうと、日本中どこにいっても同じような街ができてしまいます。
実際に、もうすでにそうなりつつあります。
大都市にいれば北海道の有名店の味を食べられますし、沖縄限定ビールも買うことができます。
大阪に行っても福岡に行っても、概ね街の雰囲気は変わらなくなって来ています。

本当にこれでいいのでしょうか?

北海道には北海道の魅力、沖縄には沖縄の魅力、東京には東京の魅力
そういった地域の特色や魅力があるからこそ、多様性が担保されそれぞれが発展していけると思います。
全国津々浦々、地元の商店が元気で地域の文化を守った街づくりを期待したいところです。

もし、何か不慮の事態が起き、大型ショッピングモールが経営破綻してしまったとします。
その瞬間に、全国のどの地域でも一斉に買い物ができないという事態が起きてしまいます。

この例えが皆さんの胸に刺さるかは分かりませんが・・・
地域の特色が薄れていくことと外来種による生態系の単純化は、私にとって同じように見えています。
どこに行っても強いブラックバスやウシガエルが幅を利かせている、その影響で地域独自の生態系が失われている。

生物多様性は、地球環境を守るために長い年月をかけて育まれて来ました。
それを、目先の便利さや感情で操作するというのは、すごく危険なことかもしれないのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です