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シギ類の驚くべき生態!

今回の記事は【シギ類】にフォーカスして、その興味深い生態について深掘りしていこうかなと思います。
どうしても、猛禽類やスズメ目などに注目が集まりやすいですが、シギ類って本当に面白くてすごい能力を持っています。

この機会に、ぜひ知っていただきたいその驚きの生態について写真やイラストを交えて解説していきます!

目次

シギ類

シギ類とチドリ類の違い

イソシギの写真
イソシギ

タシギ、タマシギ、イソシギなど、シギ類は多種多様多くの種類が存在しています。
シギ類はチドリ目シギ科と呼ばれる種類に分類され、広義にはチドリの仲間です。
しかし、謂わゆる【チドリ】と【シギ】には明確な違いがあります。

まず、趾(あしゆび)の数が違います。

多くの野鳥同様、ジギ類は4本の指を持っています。
しかし、チドリ類は後指(第一趾)が退化しており3本指しかありません。
(タゲリ・ケリ・ダイゼンなど例外はある)

足の違い
チドリとシギの趾の違い

これは、チドリが素早く走り回るように進化したからと考えられています。
逆に、シギ類は第一趾があることで、体重を支えて安定して立っていられるのです。

イカルチドリの写真
チドリ

そして、多くのチドリが短いなのに対し、シギ類は多種多様な形状を持っています。
チドリ類は、目で獲物を見つけて捕まえるので、短い嘴で十分です。
しかし、シギ類はその嘴を一番頼りにして獲物を見つけているのです。

そして、もう一つの違いが足の長さではないでしょうか。

比較的短い足のチドリに対し、シギ類の足は長いのが特徴です。
中には、セイタカシギの様に25cmほどになる種も存在しています。
(この特徴も速く走る必要がないシギ類独特と言えます)

  1. 趾の数
  2. 嘴の形状
  3. 足の長さ

この3点が大きな違いといえます。
私は、この違いがシギ類を面白くしているなと考えています。

シギのチドリの違い
並んでいると違いが分かり易い

シギ類の特徴

チュウシャクシギの写真
旅鳥のチュウシャクシギ

日本で過去に観測されたシギ類は50種(59種ほど)を超えます。
その多くが旅鳥として春や秋に渡りの途中で日本にやってきます。つまり海外からのお客様です!
しかし、冬にやってきて越冬するもの、夏に繁殖するものも少数ですがいます。

その中でも日本で繁殖する種類は少なく7種しかいません。

イソしぎの写真
日本で繁殖するイソシギ

シギ類は、長い嘴を使い、小型の甲殻類(カニなど)や昆虫を食べています。
多くの種が、常に水中に顔を突っ込み一生懸命餌を探している様子が観察できます。
頭を上げていることの方が少ないんですよね!(笑)

干潟に生息するコメツキガニ
ハマシギの写真
食事中のハマシギ

危険度の共有

そして、群れで飛び回る様子も独特です。
大群で、右に旋回、左に旋回と忙しく方向を変えながら飛びます。

一糸乱れないその飛翔は圧巻の風景です!
春と秋の風物詩とも言える景色です。

しかし、その行動のメカニズムが驚きなんです。

ハマシギの飛翔
一糸乱れないシギ類の飛翔

シギ類をよく観察していると、ある一定の集団で行動しているのがわかります。
多いときで数万羽の集団にもなるそうです。

この集団は、一種の運命共同体!
渡りの際も一緒に力を合わせて長距離を移動しますし、飛来地でも共に生活をします。

このグループで過ごす事で外敵から身を守っています。

この時に重要になってくるのが、危険意識の共有です。
外敵が襲ってきた時に、みんなが危険を共有し、一緒に行動するからこそ意味を持ちます。
みんなバラバラに行動していたら、集団を作る意味はありませんからね。

この【危険意識の共有】がシギ類は優れているのです。

餌を食べている時は、一見みんなバラバラに好き勝手採食しているように見えます。
しかし、敵が近づき一匹が食事を止めると、みんながピタッと食事をやめます。

みんなで食事
みんなで食事
みんな食事をやめた
みんな食事をやめた

この危険意識の共有ができているからこそ、一斉に飛び立つことができます。

集団飛行

集団で飛び立つ
集団で飛び立つ瞬間

そして、集団で大空を飛んでいる時も独特の危険意識が存在します。

集団で飛んでいる時、どうしても外側を飛んでいる個体は危険に晒されています。
集団の中にいる個体の方が安全な位置にいると言えるのです。

その為、外側にいる個体は徐々にストレスが溜まっていきます。
危険へのストレスもマックスに達した時!その個体は集団の真ん中に入ろうとし旋回します。
すると、その動きに合わせるように、集団全員が同じ方向に旋回します。

1、端っこのシギは緊張している
2、緊張がMAXに達する
3、みんなつられて同じ方向に旋回する

ですので、引きで見ていると、右に左に上下にと複雑に予想できない軌道で飛んでいるように見えます。

これが、外敵からすると予想しづらく、攻撃しにくいという効果をもたらしています。


それでは、もっと詳しくシギ類の驚くべき特徴に迫っていきたいと思います。

シギ類の一番のチャームポイントは嘴だと思います。
長い物、反っている物など様々な形状があります。
(この個性がシギ類の1番の魅力かもしれません!)

この嘴の形状は、採食する対象や方法によって違いが生まれています。
どんな違いがあるのかいくつかみていきましょう。

形状

ミヤコドリ

ミヤコドリの写真
ミヤコドリ

太くて立派な嘴を持っているミヤコドリ。
これは主に、二枚貝を食べるときに役に立ちます。

その立派な嘴を使い、二枚貝を器用に開いて食べることができます。
また、なかなか開かない貝の場合でも強力な嘴で叩き割ったりもできます。

嘴を使って積極的に硬い貝殻を開いていくタイプのシギ類です。

ソリハシシギ

ソリハシシギの写真
ソリハシシギ

上に反った形状の嘴を持つソリハシシギ。
彼らは、水中を嘴で探り、嘴に触れた獲物を感知して捕らえます。

反っていることで、左右に振った時に広範囲を探れる様になっているのです。
敏感なセンサーとして嘴を利用しているタイプです。

セイタカシギ

セイタカシギ
セイタカシギ

細く針の様にまっすぐな嘴を持っています。

このタイプは万能タイプと思うのですが、お箸のように獲物を上手に摘んだり
泥の中を探ったりしながら上手に餌を食べることができます。


このように、嘴の形によって採食の方法などが変わります。
嘴の形と採食の様子を見比べてみるのも面白いですよね!

実は硬くない

また、嘴は堅そうに見えるのでが、実は先端部分は曲がります。
これは、嘴先端部分に柔軟に曲がる関節部分があるからで、この構造で器用に餌を捕まえたりできるのです。

この特徴を可能にしているのは、シギの嘴に多くの神経が通っているからです。

シギ類の骨格標本などを見てみてください!
他の種の骨格に比べ、嘴の先端に細かい穴が開いていることが見て取れます。
この穴は、神経の通っている穴で、嘴の先端まで意識が行き届いているのがわかります。

味覚を感じる

食事中のアカアシシギ
食事中のアカアシシギ

多くの神経が通っているということで、シギ類の嘴はとても敏感です。
水の中に嘴を差し込むだけで、目で見なくても獲物の位置がわかります。

一説によると、微妙な水圧や水流をも感知し、獲物の位置を正確に把握しているのだとか。
しかし、驚くことに、嘴の先で獲物の味までわかってしまうのだそうです。


セイタカシギは、その足の長さが一際目立つシギです。
彼らは、他のシギ類に比べ、水深の深い部分までいくことができます。

嘴の形状だけではなく、足の長さでも獲物の種類や採食方法が変わってくるのです。

この違いは、お互いに競合しない様に工夫しているという見方があります。
採食場所や餌の種類が違うということは、限られた環境でも競合することなく生きていけるということです。

その為、違う種類のシギが並んで餌を食べている。そんな様子を見ることもあるのです。
一緒に食事していても、食べているものが違うっていうことですよね!

コチドリとチュウシャクシギの写真
コチドリとチュウシャクシギ

まとめ

いかがでしょうか?シギ類って本当に面白いと思いませんか?
主に春と秋にしか出会えない、海外からのお客様ですが
こんなに面白いんだったら、干潟に観察に出かけてみようかな!
そう思っていただけたら嬉しいです。

チドリ目というグループは、本当に多種多様!
(カモメ類も実はチドリ目)

しかし、こんなに愛すべき存在の種類なのですが、今大きく数を減らしています。
これは本当に残念なことです。

ハマシギ
ハマシギ

例えば、日本ですごく一般的なハマシギは準絶滅危惧種に指定されています。

以下主なチドリ目の危機的状況をまとめてみます。
ちょっと長いですが、どれだけ多くのチドリ目が危険な状況なのか分かっていただけると思います。

チドリ目の危機

ホウロクシギ絶滅危惧2類
シロチドリ絶滅危惧2類
タマシギ絶滅危惧2類
ヘラシギ絶滅危惧1類
ツルシギ絶滅危惧2類
アカアシシギ絶滅危惧2類
タカブシギ絶滅危惧2類
オオソリハシシギ絶滅危惧2類
ハマシギ準絶滅危惧種
コシャクシギ絶滅危惧1類
オオジンギ準絶滅危惧種
セイタカシギ絶滅危惧2類
ツバメチドリ絶滅危惧2類
オオセグロカモメ準絶滅危惧種
ズグロカモメ絶滅危惧2類
オオアジサシ絶滅危惧2類
ベニアジサシ絶滅危惧2類
エリグロアジサシ絶滅危惧2類
コアジサシ絶滅危惧2類
ウミガラス絶滅危惧1類
ウミスズメ絶滅危惧1類
エトピリカ絶滅危惧1類
チドリ目の危険度

他にもこのリストにない危険な種も存在しますが、あまりに長くなるのでこのぐらいにしておきます。

自然を守ろう!

チドリ目の数が減っているということは、海の生態系が壊れているということです。
先日も記事に書きましたが、東京湾で唯一の自然の海岸線である小櫃川河口も危険な状況です。

こんな可愛い生き物を死なせたくない!そんな幼稚な話ではありません。
近年の急速な野鳥の減少、そして自然破壊のスピード。
これは、もはや我々人間の生活にも影響が出てくるほど深刻なのです。

その為に、今の野鳥界がどうなっているのかを知ることは、一つの指針になると私は考えています。

もちろん、こんな可愛い生き物他にはいません!だから守りたい!
そういう風に言いたい気持ちは山々です。
しかし、もうそんなこと言っている暇はないのです。

シギ類って本当に魅力的な生き物です。
ですので、みんなで自然を守っていければいいなと思っています!

ではまた次回。

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