目次
ハマシギ
初夏になったので干潟にシギやチドリの観察にやってきたコアラ。
あそこに集団でいるのはハマシギだ!
観察してみよう!
ハマシギの特徴
大きさはムクドリ大
ハマシギは日本の干潟でみられるシギチドリの仲間では一番ポピュラーな野鳥です。
春や秋の渡りの時期には、水田など内陸部でも見られることがありますよ。
全長は21cm
見た感じはムクドリと同じくらいの大きさですよ。
また、群れで行行動していて多い時は数千羽という群れになります。
群れが一斉に飛び立つさまはなかなかの迫力です
夏と冬では別の顔
ハマシギは、夏羽と冬羽が大きく変わります。
冬羽は、全体的にグレイッシュなベージュカラーと白のキュートで優し気なカラーリング。
また、目の上の白い媚斑も特徴的。
クチバシや足は黒いので、モードなコーディネートでオシャレです。
しかし、夏が近づくとその姿を大きく変貌させます。
胸から足の付け根にかけてのお腹が黒くなる!!
そして背面と顔には、オレンジがかった色が目立ってきますよ。
春先などは、個体によってまだ衣替えが済んでいないものと衣替えがはじまっている子が一緒にいたりしますが・・・まるで別人!
驚くほど違って見えます。
しかし、同種のシギ類の中でお腹が黒くなるのはハマシギだけ。
つまり、見分けが難しいシギ類の中において、ハマシギは夏場は本当に見分けやすいシギなのです。
ハマシギの生態
日本で越冬する数少ないシギ
多くのシギは、夏の初め頃にシベリア近辺で子育てを終えると日本よりさらに南に移動して越冬します。
しかしハマシギは、日本で冬を過ごす(越冬する)数少ないシギ類です。
また、その数少ないシギ類の中でもハマシギは一番数が多いとも言われています。
さらに、最近の研究では日本で越冬するハマシギは北アラスカからはるばるやってきていることがわかりました。
遠いところから、はるばる日本へ!
いらっしゃ~~い!ですね。
何を食べている?
前述の通り、ハマシギは干潟でよく見られます。
彼らを観察していると、クチバシをせっせと干潟の砂の中に突っ込んで上下させています。
彼らは干潟のカニやゴカイなどを捕食していますよ。
また、最近では、彼らは干潟の泥表面の菌膜(バイオフィルム)を舌でこそげるようにして食べていることも分かっていますよ。
そのため、彼らの舌はバイオフィルムをなめとれるような特殊な筆のような形状になっているようです。
*バイオフィルムとは、固体や液体の表面に付着した微生物が形成する生物膜のこと。
身近なものでいうと、いわゆるキッチンの掃除をさぼったときに排水溝にできるあのぬめりのことです。
桑江朝比呂チームリーダーを中心とする日本・カナダ・イギリスの国際共同研究グループは,干潟に飛来する様々な種類のシギが,干潟泥の表面に発達する微生物(バイオフィルム)を食べていることを突き止めました.これまで,干潟で餌を食べるシギ・チドリ類はゴカイやカニなどの小動物を主要な餌としていると考えられており,微生物が重要な餌になっていることはまったく知られていませんでした.シギは目に見えない餌からエネルギーを補給し,越冬地の温帯・亜熱帯から繁殖地の北極圏まで何千キロにも及ぶ渡りをおこなっていたのです.
干潟の泥表面の微生物が鳥の餌 | 沿岸環境研究グループ (pari.go.jp)
高機能なクチバシ
シギ類の大きな特徴はそのクチバシ。
ハマシギの嘴も長く、少し下に湾曲した独特の形状をしています。
そんなシギの嘴・・・実はとんでもなく高機能であることを知っている人は少ないと思います。
以前に、シギ類の驚くべき生態について書いた記事がありますので引用いたしますね。
(このシギ類の記事を読むと、シギのすさまじい能力と生態に圧倒されシギチ沼にはまること必至ですよ)
実は硬くない
投稿を編集 “シギ類の驚くべき生態!” ‹ mililie — WordPress
また、嘴は堅そうに見えるのでが、実は先端部分は曲がります。
これは、嘴先端部分に柔軟に曲がる関節部分があるからで、この構造で器用に餌を捕まえたりできるのです。
この特徴を可能にしているのは、シギの嘴に多くの神経が通っているからです。
すごいぞシギ類!!!!
集団行動
ハマシギは、数百羽から多いと数千羽のグループで行動することがあります。
空を一斉に一糸乱れぬ集団行動で飛び回る姿は大迫力!
また干潟に一斉に降り立つと一気ににぎやかになります。
シギ類の集団行動の秘密もとても興味深いです。
シギ類をよく観察していると、ある一定の集団で行動しているのがわかります。
多いときで数万羽の集団にもなるそうです。
この集団は、一種の運命共同体
渡りの際も一緒に力を合わせて長距離を移動しますし、飛来地でも共に生活をします。
このグループで過ごす事で外敵から身を守っています。
シギ類の驚くべき生態! – mililie
いや~~シギ類本当にすごいし、なんて面白いんだ~~~~~~!!!!!
ハマシギの鳴き声
甲高く少しかすれた笛のような声で鳴きます。
たとえて言えば、ぴゅるぴゅる びゅ~~ ぴゅ~~~という感じでしょうか?
とても愛らしい声で、集団で干潟に舞い降りているときなどは、あたりがとても賑やかです。
日本で一番なじみ深いシギ
はまちどり
前述しました通り、ハマシギは日本では一番見かけるシギといっても過言ではありません。
また日本で越冬するまず少ないシギ類の7割近くを占めるシギでもあります。
というわけで、日本人には昔からなじみ深い海辺の鳥でした。
「はまちどり」という模様があります。
これは千鳥=千取ということで、縁起のいい柄としても知られています。
さらに、この言葉は万葉集にも登場する古い言葉です。
浜千鳥は鳥の種類に関わらず、海辺で集団で行動している鳥の総称であるそうで、ハマシギもまた浜千鳥であることは違いありません。
つまり、日本人は万葉の時代からハマシギに親しんでいたわけですね。
お馴染みの鳥がお馴染みでなくなる??
日本で越冬するお馴染みのシギであったはずのハマシギですが、近年ぐっと数を減らし続けている鳥です。
シギやチドリの類は、絶滅が危惧されているものがほとんどですが、日本では数が多いといわれていたハマシギの数が激減しているのです。
数が激減している現状
ハマシギは、日本の環境省レッドリストにて準絶滅危惧種に指定されています。
また、関東での減少が甚だしく・・・東京都、神奈川、では絶滅危惧Ⅱ類、そして千葉では絶滅危惧Ⅰ類です。(静岡県、愛知県でも絶滅危惧Ⅱ類)
これは、シギが越冬や捕食をする干潟などが開発によってどんどん減っていることが原因です。
干潟は、生命のゆりかごと言われており、私たち人間にとっても大切な場所です。
ラムサール条約!湿地の生態系を守れ! – mililie
私たち人間は、何が本当に地球や自然にとって、そして自分たち人類にとって「大事なもの」か・・・それを今一度考えなおさねばならない時期にきていますね。
ではまた次回!
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【今回使用した機材・画材】
ステッドラー水彩ペン
ホルベイン色鉛筆
NIKON D500
Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR