近年、野鳥の数の減り方が半端ではありません。絶滅危惧種も増えています。
野鳥観察を長年趣味にしている方は実感として、野鳥が減っていることに気づいていると思います。
しかし、一般の方も、10年ぐらい前を思い出してみてほしいのです。
この時期、駅前の商店街や河川敷に多くのツバメが飛び交っていたと思います。
電線にもたくさん止まっていたし、燕の巣は誰でも見ることのできる珍しいものではありませんでした。
しかし、今年はどうでしょうか?
昔に比べて見る機会が減っていると感じませんか?
事実、多くの野鳥は大幅に数を減らし、危機的状況に陥っている種も多種存在します。
あのカラスやスズメですら、この数十年の間に数を減らし続けているのです。
今回の記事は、身近な野鳥を209種ピックアップして、その現状を知っていただくべくグラフを作ってみました。
【こんなに減ってるよ!】と言いたいだけなら、極端に減っている種を取り上げるのがいいのでしょうが
今回の趣旨は、身近な野鳥がどれだけ危険なのか?そういう観点からお伝えできたらなと思っています。
目次
絶滅を危惧される野鳥
グラフを見る前に、まずはスズメのお話をしておこうと思います。
スズメは、日本人には一番身近な野鳥だと思いますし、見ない日がないと感じている方も多いと思います。
最も身近な野鳥
スズメは、早い段階から人と共生の道を歩んだ数少ない野鳥です。
現代では、生活環境の変化から、都市部での暮らしに適応しようとする野鳥も多いのですが
スズメは、古来より人間の近くで生きてきました。
登山なんかしていると、スズメがいかに人の側に住んでいるのかがよくわかります。
人の住んでいるエリアを離れると、スズメを見る機会はほぼゼロになります。
それは、標高が上がるからという話ではなく、人の生活がない場所には本当にいないのです。
そんなスズメですが、現在どんどん数を減らしています。
スズメの研究
北海道大学教授の三上修さんは、スズメの研究で知られています。
多くの人に読みやすいスズメの本も多数出版されています。
三上さんの本は、読みやすく面白いので初心者の方にもおすすめです!
さて、三上さんの研究結果をここで少し簡単にご紹介したいと思います。
詳しく知りたい方は、三上修さんのレポートを読んでみてくださいね!
日本におけるスズメ個体数減少の実態
三上さんの研究の結果、1990年から2010年までの20年の間にスズメの個体数は多くて50%減ったと見積もられています。
少なく見積もっても20%が減っていると考えられており
たった20年の間に、約1/5以上減っているということです。
このままのスピードで減少が進んでいくと、スズメでも絶滅の危機が見えてくると考えられます。
この記事の最後に載せていますが、主な野鳥のレッドリストでは国際自然保護連合の出している危険指数は
スズメの場合LCランク、つまり低危険種に分類されています。
しかし、この三上さんのお話は、無視できないと思いますし、絶滅危惧種に入る前に考えなきゃいけない問題だと思います。
三上さん本人の記事もこちらで読めます!
三上修のスズメについてよくある質問
身近な野鳥の絶滅の危険度
さて、今回の記事を制作するにあたって、身近な野鳥を209種ピックアップしてみました。
野鳥図鑑などに載っていて、バードウォッチング初心者から観察しやすい野鳥たちです。
トキや雷鳥・ヤンバルクイナなどの特殊な野鳥は含まれていません。
スズメ、カラス、ハト、カワラヒワ、シジュウカラ、マヒワなどなど
本当に身近な野鳥たちです。
そして、その209種を環境省の公表しているレッドリストと照らし合わせながら
絶滅・接滅危惧1種・絶滅危惧2種・準絶滅危惧種の4カテゴリーに分類しました。
本当はもう少し細かく分類できるのですが、今回は分かりやすく4種類です!
また、日本全国の状況だけではいまいちピンと来ないかなと思い
今回は、東京都の危機的状況も比較で調べることにしました。
同じように、環境省の公表しているデータを拾っていき、4つのカテゴリーに分類しています。
野鳥観察をしている方々には、本当に身近な野鳥たちばかりなので
ぜひ、この機会に野鳥がいかに危険な状況に瀕しているのか知っていただきたいなと思っています。
そして、どうやったら自然を守っていけるのか?一緒に考えていただけたら嬉しいです。
また、各都道府県の危険度も環境省が公表していますので、ご自身のお住まいのエリアを見てみるのもいいと思います。
全国の状況が一目瞭然なので、興味深い資料としてみていただけると思います。
全国と東京都の野鳥危険度表
こちらが、209種をそれぞれ4つのカテゴリーに分類した表です。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれでしょうが
私は実際に分類していて、心から恐怖しました。
いつも何気に見ていたあの野鳥、ノジコやハマシギやヒクイナなんかも全国で絶滅危惧種に入っています。
東京都では、アオゲラやノスリなんかも絶滅危惧1種に分類されているんです。
絶滅危惧1種とは絶滅の一歩手前ってことです。
東京都で38種がこの絶滅危惧1種に分類されています。
そして、全国でも10種が絶滅危惧1種です。
そして、この表を円グラフで示してみます。
円グラフ
まず驚くのは、東京都では1%の種が既に絶滅しているということです。
そして、半数の野鳥が何かしらの絶滅の危険を持っているということです。
先ほど話していたスズメは、日本国内ではどのカテゴリーにも入りません。
つまり、絶滅の心配はされていない種です。
しかし、先ほどの三上さんの研究結果を思い出してみてください。
何の心配もされていないようなスズメが、数を減らしているんです。
この4カテゴリーに入れられている種は、数十年後残っているのでしょうか?
東京なんて半数の野鳥がギリギリの状況なのです。
209種を全部見てみよう!
ざっと状況がわかってもらったところで、私がピックアップした209種を全て載せておきます。
見てもらうと分かると思いますが、本当に身近な野鳥たちばかりです。
街にいる野鳥・水辺の野鳥・山にいる野鳥・猛禽類、幅広く満遍なくピックアップしています。
野鳥はアイウエオ順に並べています。
左から、絶滅・絶滅危惧1種・絶滅危惧2種・準絶滅危惧種と色分けしていて
それぞれの左側のグレーの部分が全国での状況、右の白い部分が東京都での状況です。
しかし一つ気になる箇所も、東京都でハシブトガラスが絶滅となっていますが、環境省の公式の発表です。
そこは私もよくわからなかったのですが、きちんと公式発表通りに掲載しています。
なお、今回公表している209種のリストと、後述する国際自然保護連合のリストは
自由にダウンロードしていただいて構いません。
ゆっくり、見ていただけたら嬉しいです!
どうでしょうか?
結構驚く結果もあったんじゃないでしょうか?
個人的には、全国でのミサゴやノジコの準絶滅危惧種入りやハヤブサの絶滅危惧2種入りは驚きました。
それに、東京都ではモズもヤマガラもヒバリもオオバンも絶滅危惧2種入りです。
どれも本当に身近な野鳥なので、この結果が本当に悲しいです。
しかし、この状況をしっかりと受け止めなければなりません。
国際自然保護連合のリスト
国際自然保護連合が、日本の環境省のように全世界の野生動物のレッドデータを公表しています。
日本の状況と世界の状況は少し違います。
日本では多く生息しているけど、世界的にみて数を減らしている種もいます。
こちらもリストを制作しましたので、みて見てください!
左側が世界のデータ、右側が日本のデータです。
このリストは、前述の209種のリストを制作した時と違う時期に制作したので、微妙に野鳥の種類は違います。
しかし、どれも身近な野鳥をピックアップして調べています。
野鳥が住んでいる環境別にアイウエオ順に並べています。
薄い緑が街や都市公園などに住む野鳥・青は水辺の野鳥・濃い緑が山に住む野鳥・オレンジは猛禽類です。
個人的には、カシラダカやホシハジロ・ノジコのVUカテゴリーはショックでした。
どの種も本当に身近な野鳥です。
また、猛禽類のデータは、日本での猛禽類がいかに危険かを示していると思います。
猛禽類は、生態系の頂点に君臨する野鳥です。
その猛禽類が、世界よりも顕著に日本で数を減らしているということは
生態系そのものが、見えないうちに壊れていっているという証だと思います。
自然を守ろう!
自然を守ろう!自然破壊を食い止めよう!
そういうスローガンは今ではごくありふれたものかもしれません。
しかし、そんなありふれたスローガンが叫ばれ続けるこの十数年のうちに
止まることなく自然はどんどん破壊されているのです。
そして、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕しています。
もう、一人一人が真剣に考えて行動する時が来ています。
社会全体の空気感に流されてはいけません。自分達一人ひとりが考えて行動するのです。
どうすれば、この深刻な環境破壊は食い止められるのか?
どうすれば、可愛い野鳥たちと共存していけるのか?
答えは簡単です。
人間がもう少し我慢すればいいのです。
人間は人間の権利を主張しすぎなのです。
野生に土地を返してあげればいいのです。
地球上全てを人間のものと勘違いしているだけなのです。
みなさんも、この機会に真剣に環境問題について考えてみてください。
何も特別な活動をしなきゃいけないわけではありません。
しかし、心に留めて考えてほしいのです。
そして、身近なことから少しずつ見直してほしいのです。
この世界が壊れていっていること。
そして、身近な野鳥がどんどん数を減らしていること。
私たち人間が、ここで考えなければ、本当に手遅れになってしまうと思うのです。
今回のリストは、ダウンロードしていただいても構いません。
日頃の野鳥観察の時に、観察した野鳥がどのカテゴリーに入っているのか
このリストを見ながら、いろいろ考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。
ではまた次回。
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