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ガビチョウの特徴と生態と問題点【イラストと写真付き】

茂みから大きな歌声が聞こえるよ
茂みから大きな歌声が聞こえるよ

目次

ガビチョウ

スズメ目チメドリ科ガビチョウ属
スズメ目チメドリ科ガビチョウ属

都市部近郊の森林に生息するガビチョウ。
美しい歌声が特徴で、思わず『なんだこの鳴き声は?』とびっくりする事も多いカモ??
しかし、その美しい歌声、愛らしい姿とはうらはらに、ガビチョウは外来種として特定外来生物にも指定される一面が。

日本の生態系への影響は?
今回は、ガビチョウについて詳しくみていこうと思います!!

ガビチョウの特徴

ガビチョウ
ガビチョウ

どんな見た目?

ガビチョウはスズメ目チメドリ科ガビチョウ属に分類される野鳥です。
中国での名前は『中国花美(ホアメイ)』英名を『ChineseHwamei』と言います。
美しい名前ですね。

体長は25cmですので、ムクドリよりちょっと大きめかな?

アイラインが特徴
アイラインが特徴

体はオレンジブラウン、頭頂部・喉元・背中に暗い縞模様があります。
何より、この種の特徴といえばアイリングですよね!
目の周りは青色、そしてその周りは白いというとても印象的な目元をしています。
まるでアイシャドーをつけたようなブルーが印象的!

しかし、青色は実は肌の色が見えているんです!
まさかの皮膚!
タンチョウの頭部の赤色は、実は毛がなく皮膚の色!と初めて知った時は衝撃的でしたが
しかし、ガビチョウの肌は青く、目の周りは青い肌が見えているというのもなかなかショッキング!!!!

青い部分は皮膚が透けてる
青い部分は皮膚が透けてる

ガビチョウの鳴き声

ガビチョウの鳴き声はとにかく美しい!!
野鳥界にはウグイス・オオルリ・コマドリ・ミソサザイ・メジロなど歌声マスターは数多くいます。
しかし、ガビチョウの鳴き方はどの種よりも大きく、伸びやかで、レパートリーに富み、余裕を感じるんです。

力強く鳴くガビチョウ
力強く鳴くガビチョウ

まさに腹から声が出ているというか、次元の違うシンガーが来た!って印象を受けます。

『チュイー!ピーチュイー!チュイチーチュ!チュイチーチュ!ピーピーピーチュイー』
とても複雑に、太くハッキリした音階で巧みに鳴きます。

また、モノマネも上手で、サンコウチョウやウグイス・イカルなど多種な歌声を真似します。
しかも、私の個人的な印象では、本家よりうまい!(笑)
いますよね。
本家よりうまい物まねタレント。

また、一年中囀るのもガビチョウの特徴で、美しい歌声をいつも聴くことができます!

地味なルックスとは裏腹に、派手な歌声を持った野鳥さんです。

ガビチョウの生態

どこに住んでるの?

中国南部・ベトナム北部・ラオス北部に生息
中国南部・ベトナム北部・ラオス北部に生息

本来、中国南部・ベトナム北部・ラオス北部ととても限られたエリアに生息している野鳥です。

しかし、現在では日本、マレーシア半島、台湾、シンガポール、ハワイなどに移入され定着しています。
渡りや移動は行わず、定住型の生態を持っており、ゆっくり生活圏を拡大していっているという状況です。

本来の生息地は、標高1800mまでの森林・山地・低木地などです。
移入先では背の高い草・葦原・庭園などにも生息しています。
日本では、主に森林や低木地や都市公園などで観察されています。

年間を通して雨の多い、亜熱帯気候・大陸気候・温帯気候を好んでいます。

また、森林でも樹上より地面付近を好み、飛ぶことはあまり得意ではないようです。

なのを食べてるの?

比較的低い場所にいます
比較的低い場所にいます

地上性の昆虫や果物などを食べています。
繁殖期などの十分な栄養を必要とする時期にはバッタの卵やアリなどを好んで食べていたりもします。
だから、もし探すときは地面の近くがいいですね。

繁殖

ガビチョウは一夫一妻で繁殖を行います。

巣は、地上付近から1mほどの高さの植物に作り、草・笹・木の根などを使います。
通常、2~5個の卵を産み、雛の孵化後は夫婦協力して給餌を行います。

オスは、縄張り意識が強く、ソングポイントを見つけてはしきりに鳴きながら誇示!
一般的に、繁殖期になると縄張りを形成する野鳥達ですが、ガビチョウは一年中さえずる野鳥。
だから鳴き声が印象的なんですね。(家の近くの林だとウルサイ!と言われることも。)
他の種が縄張りを形成する前より、ガビチョウは縄張りを作るという特徴があります。

生態系への影響

可愛いけれど外来種
可愛いけれど外来種

ガビチョウは外来種として、日本をはじめ東南アジアやハワイなどに定着していますね。
日本では、重要対策外来種、特別外来生物、日本の侵略的外来種ワースト100に指定されています。

では、外来鳥類は一般的にどのような影響を及ぼす恐れがあるのでしょうか?
ここで少しまとめておきたいと思います。

外来種問題についての記事
外来種は何が問題? – mililie

懸念1 資源をめぐる競争

生物は住む場所や食べるものなど、生きていく上で必要な資源が重要になってきます。
もし、同じような環境に住み、同じような食べ物を食べる生き物がいる場合
その種同士は、限られた資源をめぐって競争を行うことになります。
この競争で敗れた種は、大きく数を減らす恐れがあるのです。

現在、都市部ではカラスとワカケホンセイインコの勢力争いが起きています。
(そもそも、人間とカラスとの問題もありますが)
もし、ワカケホンセイインコが勝ってしまった場合、都市は南国鳥の天下になってしまうことに!
電線にずらりと、トロピカルな鳥さんが並ぶなんてことも・・・???

懸念2 捕食

これはそのままで、その種が食べる事により、食べられた種が数を減らすという事です。
ガビチョウの場合、昆虫がそれにあたりますね。

懸念3 病気の媒介

外来種は、他のエリアから入ってきた生物ですが、その体内には微生物を持っています。
元いたエリアでは生態系に影響のなかった微生物も、在来種にとっては問題という場合が。
つまり、動物を媒介して日本にはいなかった病原菌などが広がる恐れがあります。

懸念4 雑種の形成

近縁種の場合、多種間の交配が起こる可能性があります。
日本では、マガモやカルガモがアヒル(家禽)やアイガモ(マガモとアヒルの雑種)などと交配してしまっています。
もう、なんだかわからない状況!
これが進むと、種の多様性が失われていき、生態系が崩れるリスクが高まっていきます。

懸念5 環境の改変

例えば、鹿が増えすぎるとします。そうすると鹿の餌となる低木層の植物が減少。
すると、植物が守っていた森林の生態系や環境が変わってきてしまいます。
最初は些細な変化でも、ある一定のレベルを超えてしまうと、気候にまで影響を及ぼすことがあります。
ほんの小さなことが、とんでもない事態を引き起こすことに繋がるのです。
このように、生物相が変わると、その地域の気候や環境を変えてしまう恐れがあるのです。

懸念6 生物多様性の減少

外来種は移入先の生態系から解放された存在です。
ですので、上記の1〜5のような問題が懸念されています。
そして、その1〜5の問題の先には、地球規模の生態系の多様性が失われるという問題があります。
簡単にいうと、地球上の生物種の数が少なくなるということです。
そうなってしまうと、地球そのものの環境破壊につながってくる大問題なのです。

以上の5つが主に懸念される外来鳥類の特徴です。

ハワイでの影響

ハワイでは、主に二つの問題が起きていると考えられています。

1つ目は、在来種との資源をめぐる競争が起き、在来種の数が減っているということです。
カウアイヒトリツグミは絶滅、カウワイツグミは絶滅危惧種、キムネハワイマシコも絶滅危惧種と在来種の数に影響が出ています。

そして、2つ目は病気の媒介です。
鳥インフルエンザなどの元々ハワイでは確認されなかった病原体を持ち込んだと言われています。
先ほど紹介したカウアイヒトリツグミの絶滅も、病原体の感染が影響していると考えられています。

台湾での影響

台湾には【TaiwanHwamei】というガビチョウがいます。
元々は、中国ガビチョウの亜種と考えられてきましたが、現在では独自の進化をした別の種と言われています。

この台湾ガビチョウは現在、準絶滅危惧種に指定されています。
やはり、中国ガビチョウとの資源の競争が起きたと考えられています。

また、中国ガビチョウと台湾ガビチョウとの交雑も問題になっています。

日本での影響

日本の在来種への影響は??
日本の在来種への影響は??

2000年代初頭から日本でもガビチョウの生態系への影響が問題視され始めました。
しかし、現在ハッキリした問題点はわかっていないのが現状です。

資源の競争でいうと、ウグイス類の野鳥やツグミ類の野鳥への影響が考えられます。
しかし、今わかっていることで言うと、明確な影響は観察されていないと言うことです。

しかし、ガビチョウの縄張り内でのウグイスの活動減のデータなどもあることから
今後も、調査を進めていく必要がありそうです。
こういう問題は、長期にわたって表面化していくことも多いからです。

ワシントン条約

ワシントン条約とは、1973年にアメリカのワシントンで採択された絶滅危惧される動植物の国際間取引を規制する条約です。
正式名称を【絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)】といいます。
英文の頭文字をとってCITES(サイテス)とも言われたりします。

簡単に言うと、世界の動植物の多様性を守るために、輸入や輸出を規制していこう!と言う取り決めです。

ガビチョウは、2000年にこの条約の附属書Ⅱにリストされました。
つまり、国家間での輸入輸出制限がかけられていると言うことです。

ワシントン条約と種の保存法 環境省

ペット目的

そもそも日本には江戸時代より愛玩目的で移入されたと言われています。
しかし、ペットとして一般的には普及しなかったのだとか。

なぜかというと、その大きな鳴き声が日本の住環境に合わなかったこと
また、特殊な練り餌を給仕する必要があり、世話が大変だと言うことが挙げられます。

しかし、その美しい歌声から一部の【鳴き合わせ】目的のために飼育されてきました。

その様に持ち込まれたガビチョウが、逃げたり野外に放たれたりしたことが定着の原因だと言われています。
人は勝手な生き物です。

ワシントン条約の無力さ

中国国内では、一般的なペットとして、また老人たちが公園で鳴き合わせを行うなど親しまれています。
その為、海外への販売も多数行われており、シンガポール・タイ・インドネシアなどに輸出されています。

しかし、ワシントン条約の定める輸出入の際の報告というのがなされていない現状があります。
種の保全、生物多様性を守るため、国際的に決められた条約が守られていないということは問題です。

まとめ

今回はバードウォッチャーにとって最も身近な外来種ガビチョウについて書いてみました。

ネットやSNSの意見を見ていると、別に問題ないんじゃない?という意見が多い事に気づきました。
もちろん、先ほど書いたように日本での影響は現在わかっていません。

しかし、分かっていないと言うことは大丈夫だと言うことではありません。
外来種問題は、何も生態系に影響が出ることだけが問題ではありません。
人間の手により、地球上で様々な進化を歩んできた生態系の多様性が失われていると言うのが根本的な問題です。

ですので、この機会に少しでも外来種問題について考えてみていただけたらと思います。

ペットは最後まで責任をもって

ペットを飼うきっかけは殆どが可愛いからという理由だと思います。
しかし、そのペットは命尽きるまで責任を持って、一緒に暮らしてほしいなと思います。
飼うのが大変になったから、自然に逃してあげよう!と言う考えは間違っています!!

そのペットの為にもなりませんし、他の多くの命が失われる可能性があるからです。
さらに、回り回って私たち人間の生活を脅かす事にもなるのです。
これは大げさな話では決してありません。

ホモサピエンスが誕生しておよそ180万年。
その長い歴史の中で、この200年ほどで地球上の環境が大きく壊れようとしていることを
もう一度考え直すときではないでしょうか?

野鳥観察に出かけたら、ぜひ自然を感じ野鳥達と同じ環境を楽しんでみてください!


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【今回使用した機材・画材】

ステッドラー水彩ペン

ホルベイン色鉛筆

NIKON D500

Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR

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