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コアジサシの生態と観察ポイント【イラストと画像あり】

目次

コアジサシ

コアジサシのプレゼント行動

コアジサシが、仲間にお魚をプレゼントしているよ!
何をしているのかな??

みんなでよ~~く観察してみよう!

コアジサシの特徴

チドリ目カモメ科コアジサシ
チドリ目カモメ科コアジサシ

アジサシの仲間でも特に小さいのでコアジサシと呼ばれるこの鳥の全長は、24cm。
つまり、ツグミくらいの大きさです。
しかし、翼を広げると54cmほどにもなり、結構大きく見えますよ。

白と黒そしてオレンジがポイントカラー

コアジサシの写真
夏の空を爽やかに彩るカラー

体の上部は、薄いグレーでお腹と額そして喉元は白。
頭部は帽子をかぶったように黒く、アイラインも黒です。
また、鋭く長いクチバシは鮮やかなオレンジ味のある黄色で、先っちょがちょっとだけ黒いのがポイントです。
そして足はピンクっぽいオレンジ色をしています。(夏羽)

また、飛んでいるときのフォルムが独特です。
なんといっても、燕尾服のような尾羽が特徴的!

見た目はキュートですが、飛ぶととってもカッコイイフォルムをしていますよ!

日本で繁殖

コアジサシは、日本では夏鳥
アフリカからオーストラリアにかけての沿岸部で越冬し、春先に日本に飛来し繁殖をします。
多くの個体が日本で繁殖するので、日本での繁殖の成否が注目される鳥です。

ダイビングの名手??

ホバリングの写真
ホバリング中

コアジサシは、主に魚を食べています。
飛行しながら魚を探し(ホバリングもしますよ)、見つけると一気に水面にダイブ

翼をすぼめ嘴から突っ込んでいくその様子が、魚の鯵を突き刺すようだ・・・ということで鯵刺(アジサシ)の由来と言われます。
アジサシの中でも特に小さな種類なので、コアジサシというわけ。

では、狩の様子を見てみましょう!

1、狙いを定める
2、突撃!
3、勢いよく着水
4、失敗。。。

小鯵刺にとってもこの狩りは難しい技術の様です。
ですので、狩が上手というのが女の子からモテる要素なんですって!

コアジサシの生態と繁殖

求愛給餌

餌を運ぶコアジサシ
魚漁れましたよー!

彼らは、春先にやってきてすぐに繁殖すべくパートナーを探し始めます。
そして、意中の相手を見つけると・・・魚をとってきてメスにプレゼント!
「うけとってください!!」と差し出された魚を「はい!」受け取ればとカップル成立です。
これは求愛給餌とよばれる行動です。

しかし、これだけではまた「つがい」が成立したとはいえず、メスはただ「ま、悪くないわねあなた」ってくらいなもの。
そのため、オスはそれからもメスにプレゼントをし続けることになります。
「釣った魚に餌をやらない」なんて言葉がありますが、そんなことをしたらすぐに逃げられちゃうのです。
鳥もつらいよ。

しかし、オスはただただ貢ぎ続けるだけではありません。
ちゃんと計画があるのですよ。ふふふ

ただの「貢くん」では終わらない

田んぼにいるコアジサシ
水田でも狩をしています

オスは、求愛を受け入れられたあとも尚、せっせとメスにを運び続けます。
しかし・・・少し経つと、ふと、一時的にそれをやめてしまうのです。

「もう君に尽くしてばかりなのは疲れた」

・・・というのではありません。
「ん?なんでくれないの?お腹すいちゃったじゃない・・・。」
「餌を頂戴よ!」とねだるメスをさりげなくさりげなく営巣地へ少しずつ誘導!
そして、メスが餌欲しさにほいほい営巣地までついていくとやっと【つがい成立】というわけ。

求愛給餌から【つがい成立】まで、ナント約2週間!
オスの必死な貢ぎ行動が報われる瞬間ですね。

小悪魔的コアジサシ女子

さて、正式に【つがい】となった後も・・・魅力的な女子はモテるもの。
正式な相手が居るにもかかわらず

「ヘイ、お嬢ちゃん、あんな奴より俺の方が素敵だろ?どうだい、僕と・・・」

なんていう輩が現れるのですよね。
もちろんプレゼントの魚を持って。

すると、「あら、あなた可愛いじゃない?ちょっとタイプよ」と答えるかどうかはわかりませんが
メスは、プレゼントのみはちゃっかり受け取り・・・様様な手練手管を用いて適当にあしらってしまう場合が多いようです。

ふふふ・・・・なんて小悪魔なの、コアジサシ女子!
そして、やっぱり男はつらいよ・・・。

営巣

5月に入ると、彼らは砂地や礫地などにコロニーを形成し集団営巣をします。
ちなみに、コアジサシの好みの営巣地は「裸地」。
たとえば、緑の生えない、ただの砂地や砂利の多い河原などです。そこに、ぱっと見は「巣」ともいえないような、ごく浅いお皿状の窪みを作り、営巣完了!そして2~3個の卵を産むと、オスメス協力して卵の面倒を見ますよ。

卵のお世話はたいへん!

彼らは日陰もないような裸地に営巣をします。
そのため、さんさんと照り付ける太陽光線で営巣地はかなりの高温に。

だから、両親はを守るために工夫をこらすのです。

たとえば、自分の羽を広げて巣の上に日陰を作り、直射日光から卵を守ったり・・・
さらには、自らが水あびをしてから濡れた体で卵を濡らし、その気化熱を利用して卵が高温にならないようにしたり。

そうして、夫婦が協力して卵を守ります。
(ちなみに、抱卵しはじめて最初の方は主にメスが卵を守っているようです。
 その間、もちろんオスはメスのために一生懸命餌を運び続けますよ)

早熟なヒナたち

ヒナが無事に生まれると、ヒナたちはなんと生まれて2~3日後には、もう巣から歩いて出ていきます。

え~~~!なんて早熟な・・・。
孵って2~3日で歩いて家を出るなんて!!

そして、どこに行くのかというと・・・太陽光線(直射日光)や外敵から身を守るため、物陰を見つけて自分で隠れるんですって!
生後2~3日にして、独立どころか「父ちゃん、母ちゃん、僕は自分の身は自分で守るよ!」ってなもんでしょうか?
出来たお子さんです。

もちろん、まだ小さく飛べもしないので餌は自分ではとれません。
そのため、親に「とうちゃん!かあちゃん!ぼくはここだよ!!」と鳴き声で自らの場所を知らせて、給餌をうけますよ。

うむ~~~ほんとに、出来のいいお子さんだ。

ヒナたちは、生後17~19日前後で飛べるようになり、集団営巣地を離れます。

そして、アジサシのアジサシたる所以・・・魚のとり方の特訓のスタートです!
飛びながら魚を見つけて、時にはホバリングもし、そして水面に嘴から突っ込んでお魚ゲット!
これは、なかなかの技術が必要。
「ほら!ちゃんと学ばないと渡りの時に困るわよ!!」ってなわけで親も必死。
コアジサシに生まれたとはいえ、生まれつきできるわけじゃないのですね。

というわけで、この練習時期も親は子に給餌を続けます。
秋には長い渡りが待っているわけですので・・・しっかり漁ができるようにならないといけません。

しかし、中には出来の悪い子もいるようで・・・そんな子は、渡りの途中でも親から給餌を受けるそうです。
独立は早いけど、完全な独り立ちにはちょっと時間がかかるんですね。

秋の渡りは集団で

夏が終わり、秋。

彼らは、あちこちから海岸や干潟に大集結!
大体、渡り鳥は近辺の個体が集合して集団で渡ることが多いのですが、コアジサシその範囲が非常に広く、中にはわざわざ北上して集団に合流し、それから渡りのためまた南下するというのもいるくらいです。
そのため、集団によっては5000羽もの数になるそうですよ。
そして、大集団で南へ渡っていくのです。

また来年!

しかし、それにしてもすごく個性的な野鳥ですよね。

数の減少

著しい数の減少

コアジサシの集団
昔はもっと大群でした。。。

日本で繁殖を行うコアジサシ。
しかし、その数はここ20年の間でぐんぐん数を減らしています。

そして現在、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

なぜそんなに数が減っちゃったの??

前述しました通り、彼らは「裸地」に営巣をします。
つまり、緑もなんにもないただの砂地や礫地などです。

この「なんにもないただの砂地や礫地」というものは、人にとっては、あまり意味をなさないように見えることが原因です。
何もなければ埋め立てて、何か有効利用しようというのが普通です。
今、全国的に緑も何もない砂地や礫地が人の手によってなくなって来ています。

また、裸地にしておくくらいなら、草木を植えて公園にしようという考えも多いでしょう。

しかし、彼らはそれではダメ。
「ただの裸地」が必要なのです。
というわけで、コアジサシが繁殖に適した営巣地が減った事が一番の原因なのです。

また、数少ない営巣地も車の乗り入れや、増えすぎたカラスや捨てられた野良猫が原因で、繁殖が阻害されるケースも多くあります。

埋め立て地に営巣するコアジサシ

海を埋め立てて何かを作ろうとするとき、埋め立て後、建造物を作る前はただの裸地になります。
そういう場所に営巣するということも多いようです。

近づく大阪・関西万博 野鳥の「いのち」と開発に揺れる夢洲 – 産経ニュース (sankei.com)

しかし、それも一時的なこと・・・。
来年はもう、その場所はないんですよね。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律

そんな中、彼らを守ろうという動きも出ています。
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で、国際希少野生動植物種に指定されています。
環境省_コアジサシ繁殖地の保全・配慮指針 (env.go.jp)

この法律は、野生動植物が、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであることに鑑み、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図る。
それにより、生物の多様性を確保、そして良好な自然環境を保全し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とするもの。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 | e-Gov法令検索

人間にとって、一見大切ではないようなことでも自然環境を守るという意味では、ものすごく大切なこともあります。
自然環境の破壊は、まわりまわって人間の生活にも悪影響を及ぼします。
そのため、私たち一人一人が絶滅危惧種の立場になって考えることが必要なのです。

東京都下水道局施設の屋上「リトルターンプロジェクト」

現在、東京都では、営巣場所が乏しくなり絶滅の危機に瀕したコアジサシを、下水処理施設の屋上を東京都下水道局及び大田区の協力で、営巣地としてふさわしい環境に整備し、保護活動が行われています。

NPO団体のHP
Little Tern Project 公式:リトルターン・プロジェクト- Save the Little Tern.

しかし、コアジサシは集団営巣をするという性質上、とても広い裸地を必要とします。
このプロジェクトは本当に素晴らしい試みだと思うのですが、実際は東京都下水処理場の屋上では足りないのです。

これ以上裸地を減らさないこと、そしてこのようなプロジェクトがもっと拡がっていくことを期待しています。

まとめ

コアジサシの写真
夏の風物詩

鈴虫の声をきくと「ああ秋だな」と感じるように、夏を感じる音というのがあります。

映画なんかで、夏の海のシーンで必ず入っているあの鳴き声!
あの鳴き声を『カモメ』と思っている方も多いですが、実はウミネコやコアジサシなんですよね!

夏、海辺に立ち耳を澄ませば、潮ととともに彼らの声が聞こえてきます。
潮風を胸いっぱいに吸い込み、海鳥の声をきく。

あと10年後にこんな体験ができなくなると想像すると、胸が痛いです。
鈴虫の音が聞こえない秋の夜が想像できるでしょうか?
彼らのいなくなった海のさみしさは、いったいどれほどかと思います。


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【今回使用した機材・画材】

ステッドラー水彩ペン

ホルベイン色鉛筆

NIKON D500

Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR


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