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オオヨシキリ
ギョギョ!ギョギョシ、ギョギョシ!夏になるとよく聞くあの鳴き声!
『虫かな?』そう思う人も多いようですが、実は可愛い野鳥さんなんです!
日本の夏の風物詩【オオヨシキリ】について書いてみようと思います。
オオヨシキリの特徴
オオヨシキリはスズメ目ヨシキリ科ヨシキリ属に分類される小鳥です。
ウグイスやヤブサメなどのウグイス科、メボソムシクイやエゾムシクイなどのムシクイ科
また、オオセッカなどのセンニュウ科、セッカなどのセッカ科などとよく似ていて
昔は、一括りにウグイス科と呼ばれていました。
(昔は見た目や行動などをもとに分類するしかなかったんです・・・)
しかし、近年のDNAの塩基配列解析により、細かく分類が変わりました。
はっきり言って、この手の野鳥の識別は本当に難しい!!
ベテランバーダーさんでも、写真だけ見せられて識別しろと言われても困ってしまう程。
中には、諦めた!!って方も!
しかし、見た目がよく似た野鳥は鳴き声が全然違うという特徴もあります。
ですので、元ウグイス科の野鳥達は、鳴き声を覚えていくのが識別の大切な要素。
見た目の特徴
と言っても、このオオヨシキリは比較的識別しやすい野鳥です。
なんと言っても、口の中が真っ赤で、寝癖のようなボサボサ頭が特徴的!
大きなお口を開いて、一生懸命囀っていますから、真っ赤な口内は一目瞭然!
それに、『寝癖ぐらい治しなさい!』とツッコミを入れたくなる程の冠羽が可愛さを引き立たせてくれています。
体長は18cmぐらいなので、スズメより少しだけ大きく見えます。
体色はオリーブ褐色の上面と、白い下面が特徴で、胸には細かく薄褐色の縦班があります。
オオヨシキリの鳴き声
そして、一番の特徴といえば、なんと言ってもその囀りだと思います。
【ギョギョシ!ギョギョシ!ギョシ!ギョ!ケケケ】
なんとも形容しにくい独特の世界観で、大声で鳴きます。
一般の方で、この鳴き声を聞いて、小鳥の囀りと思う人は少ないのではないでしょうか?
『虫が鳴いているんだろうな』そう思っている方もいると思います。
しかし、あの独特の世界観を覚えてください!
それが、オオヨシキリの愛の歌なのです!!
オオヨシキリの生態
オオヨシキリは、日本では夏鳥として4月の後半ごろから8月ごろまで観察することができます。
冬になると、フィリピン、ベトナム、インドネシアなどの東南アジアに渡っていきます。
つまり、日本には子供を産むためにやってくるんですよ!
多くの夏鳥同様、オオヨシキリもオスがいち早く繁殖地へやってきて、熾烈な(ちょっと地味な)縄張り争いをします。
早く着いたものから『ギョギョシ!ギョギョシ!』と例の鳴き声で縄張りを主張して回り
後から来たものは、その縄張りを奪おうと『ギョギョシ!ギョギョシ!』と迫っていきます。
さらに後から来たものは、もう間に入って行こうと『ギョギョシ!ギョギョシ!』とプレッシャーをかけます。
そんなこんなのやり取りが、遅れてやってくるメスの到着まで続くのです。
縄張り宣言
野鳥の縄張り争いは種によって様々です。
鳴き声で争う者もいれば、格闘で直接的に戦う者もいます。
オオヨシキリの場合、自分の主張する縄張りを鳴き声で主張しています。
『俺の縄張りはここからここー!』と、移動しながら鳴くことで陣地の奪い合いをしているのです。
縄張りを主張するのに適した場所には、頻繁に訪れて大声で鳴きます。
そんな場所を【ソングポイント】と呼びます。
ですので、ソングポイントを見つけておくと観察しやすくなります。
そこでじっと待っていれば、いつかはやって来て鳴き始めるからです。
しかし、あくまで縄張りを主張しているということを忘れないでください!
ソングポイントに、人間がむやみに近づきすぎると、オオヨシキリはその縄張りを放棄してしまうことがあります。
どこに住んでるの?
オオヨシキリは、平地から山地の河原・草原・湿地・湖沼などに生息しています。
水辺のヨシ原を特に好み、芦(アシ)の密生している環境を好んでいます。
ヨシ原に住んでいるので大葦切(オオヨシキリ)と呼ばれているんですね!
このヨシとアシって野鳥の生息地でよく出てくる植物の名前なのですが、ちょっと混乱しますよね。
実は、同じ植物です(笑)
元々は、葦(あし)と呼ばれていたこの植物ですが
アシが【悪し】に通じるため、ヨシ(良し)と名前を変えたのだそうです。
しかし、関西地方を中心に、アシという呼び名も残り続け、今ではどちらの呼び名も混在しているということです。
つまり、オオヨシキリは大葦切と書いてオオアシキリと呼ばれていたかもしれないんです。
良かったですね!オオヨシキリくん。
繁殖
そんなオオヨシキリくんは、葦の密生している超茂みがお好み。
メスはオスの縄張りを廻って、より葦の密生している縄張りを持つ雄とツガイになります。
オスはメスにアピールしようと、それはもう一生懸命です。
朝から晩まで、そして夜中でも、パートナーが見つかるまでは必死で鳴き続けますよ!
しかし、パートナーが見つかり、メスが巣を作り出すと、パタっと鳴かなくなります。
オオヨシキリの鳴き声を聞いたことある方はわかると思うのですが、それはもううるさい!!
あんなエネルギーで鳴き続けていたら、本当に疲れちゃいますよね。
つまり、パートナーが見つかって一安心ということですね。
また鳴き始める
しかし、メスが巣をかけ、卵を産み始めると、またオスは大声で鳴き始めます!!
なんでやー!
そう!次のパートナーを見つけようと必死になるのです(笑)
一方、モテないオスもいます。
モテないオスは、モテるオスが2回目のお相手を探している間も、一生懸命メスにアピールし続けています。
しかし、モテモテのオスが2人目の妻をゲットしていても、モテないオスは相変わらずモテないのです。
なんとも世知辛い・・・ギョギョシ!!!
不思議な夫婦観
多くの野鳥が一夫一妻で繁殖をおこなっています。
これは、子育てを夫婦共同で行えるので、子孫が生き残る可能性が高くなるからです。
しかし、一夫多妻で繁殖を行う種もいます。
今回の主役、オオヨシキリもその一種です。
メスからしてみると、巣作り・抱卵・子育てと全部一人でするのは大変です。
オスが手伝ってくれた方が絶対に楽に決まっています。
しかし、モテないオオヨシキリは一向にパートナーは見つかりません。
逆に、モテるオオヨシキリは、子育てを手伝わなくても2人目の妻が見つかります。
不思議ですよね。
これは、モテるオスの秘密【密生した葦原】が鍵となっています。
子育ての苦労よりも豪華な家
オオヨシキリの天敵は、イタチやヘビなどの地上性の捕食者と猛禽類などです。
そんな外敵からヒナ達の身を守るには、密生した葦原は最適な環境と言えます。
ですので、そんな好条件を縄張りに持つオスは、メスの熱い視線を一手に受けるのです。
しかし、密度の薄い葦原を縄張りに持つオオヨシキリは、一向にモテません。
いくら『僕は一生懸命子育てを手伝うよー!』と言っても、捕食者から身を守れる豪華な家には敵わないのです。
つまり、オオヨシキリの場合は、見た目や性格より、まずは家!いい家を提供できる雄がモテるのですね。
詳しくは、沢山の研究論文などがありますので読んでみてください。
下記のサイトは、一番短く端的に読めるなと思ってリンクを貼っておきますね!
日本鳥学会誌 オオヨシキリの生態と配偶システムの個体群間比較
コヨシキリとの棲み分け
オオヨシキリととてもよく似た種にコヨシキリというのがいます。
その名の通り、オオヨシキリを小さくしたようなルックスで、黒い頭側線(頭のライン)が識別のポイントです。
このコヨシキリは、オオヨシキリと上手に棲み分けをおこなって暮らしています。
同じような湿原や草原に住む両者ですが、オオヨシキリは比較的水辺を好むのに対し
コヨシキリは、乾燥したエリアを好む傾向があります。
また、同じエリアで繁殖したとしても、渡りの時期をずらしオオヨシキリより遅れて渡ってきます。
時期を微妙にずらすことで、オオヨシキリとの無用な縄張り争いを避けていると考えられています。
また、密度の高い葦原を好むオオヨシキリに対し、コヨシキリは比較的密度の薄い方を好む傾向にあります。
さらに、同じようなエリアでも比較的上層部を利用するオオヨシキリですが、コヨシキリは下層部を使用しています。
このように、似たような種ですが、住処や時期や空間的な違いを出すことで、うまく棲み分けができているのです。
まとめ
今回はオオヨシキリという比較的地味めな野鳥を取り上げてみました。
しかし、こうやって見ていると一見地味なオオヨシキリも、どんどん魅力的に感じて来ますよね!
あっ!あのオスは葦が密生している所で鳴いているからモテモテだね!
逆に、あのオスはあんな場所で鳴いているから、きっとモテないんだろうなぁ〜。
コヨシキリとオオヨシキリは上手に棲み分けしてるな!
見た目が似ている元ウグイス科の野鳥も、鳴き声を覚えていこう!
そんな風に、オオヨシキリを観察してみると、また違った彼らの魅力が見えてくると思います。
是非!今年の夏はオオヨシキリを観察して見てくださいね!
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【今回使用した機材・画材】
ステッドラー水彩ペン
ホルベイン色鉛筆
NIKON D500
Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR