目次
野鳥撮影完全マニュアル
野鳥撮影・ポートレート・スナップ・鉄道・スポーツ・ets
色々な撮影がありますが、私は野鳥撮影が一番難しいと思っています。
超望遠レンズを使用する
予想のできない動く被写体
明暗差の激しい環境
シャッターチャンスの少なさ
どれをとっても、トップクラスに難しいジャンルではないでしょうか?
しかし、現代のカメラの性能は爆発的に上がっています。
正直、プロカメラマンという職業は、そのうち無くなるんだと思っています。
誰もが、少しの知識があればいい写真が撮れる。そんな時代になっているんだと思います。
そこで、今回は【野鳥撮影完全マニュアル】と題しまして。
初心者の方でも、これさえ押さえておけばいい写真が撮れるよ!
そういうお話をしてみたいなと思います。
※注 完全マニュアルなので、情報量が多くなってしまいました。
ですので、目次を参照していただきながら
お気に入りなどに追加しゆっくり読んでもらえると良いなと思っています!
望遠レンズを使用しよう!
まずは、使用する機材を押さえておきましょう。
以前、野鳥撮影にオススメのカメラをご紹介したことがありましたが
どんなカメラでも良いというワケにはいきません。
ですので、最低限の知識だけは押さえておきたいところです。
カメラボディは、とりあえず一眼レフかミラーレスを準備してください!
明暗さの激しい環境や、動き物への追従性など、基本スペックがある程度ないと対応が難しいと思います。
本当は色々こだわると機種もアレコレあるのですが、現在のカメラボディだったら大丈夫だと思います。
野鳥撮影カメラはどう選ぶの?初心者向けに詳しく解説【2022年最新版】
何はともあれ、大切なのはレンズ!
焦点距離300mm以上のレンズが必要になります。
【レンズの種類】
一般的には
焦点距離 | 使う時のイメージ(画角) |
10~24mm | 広角レンズ |
24~70mm | 標準レンズ |
70~200mm | 望遠レンズ |
細かく言えば色々ありますが、とりあえずこのように考えてレンズを選ぶことが多いと思います。
しかし、野鳥は本当に小さくて遠くにいますから、この考え方では通用しません。
野鳥撮影では
焦点距離 | 使う時のイメージ(画角) |
200~400mm | 広角レンズ |
400~800mm | 標準レンズ |
800~1600mm | 望遠レンズ |
こんなイメージになるでしょうか。
もちろんこれは人それぞれ考え方はあると思います。
なぜかというと、一般的な画角のようにメーカーが定めている基準ではないからです。
しかし、おおむね野鳥カメラマンに聞くと、上記の表に異論は出ないと思います。
この様に、レンズの考え方が違うということをまずは押さえておきたいと思います。
テレコンバーター
レンズの焦点距離をもっと伸ばしたい!
そういうときに使えるのがテレコンバーターです。
これを、レンズとボディの間に入れると、焦点距離を1.4倍や2倍に伸ばすことができます。
しかし、デメリットもあって、最小F値が大きくなってしまいます。
ですので、F6.5のレンズなどに使うとF8を超えてしまいオートフォーカスが使えないなんてことも。
また、解像度が低下するというデメリットもあります。
ですので『せっかくミサゴを見つけたけど遠すぎるぅー!』というここぞというときに使用したいです。
フォーカスモードの使い方
カメラには、大きく2種類のフォーカスモードがあります。
カメラマンがピントリングを回してピント調整を行うマニュアルフォーカス。
カメラが自動でピントを合わせてくれるオートフォーカス。
この2種類です。
初心者の方は、断然オートフォーカスの方が安心だと思います。
しかし、全部カメラ任せではどうしてもピントが合わない場面が出てきます。
この様に、藪の中に入っている野鳥や、木の密集した枝に止まっている野鳥。
そんな野鳥を撮影する際、オートフォーカスでは素早く正確にピント調整することが難しいです。
ですので、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの併用がオススメです!
併用の仕方は主に2種類!
1、マニュアルフォーカスで大まかに合わせ、オートフォーカスで最終調整
2、オートフォーカスで大まかに合わせ、マニュアルフォーカスで最終調整
藪の中にいる野鳥などは、まずマニュアルフォーカスで大まかに合わせてあげると
オートフォーカスが格段に合わせやすくなります。
更に、オートフォーカスではイマイチな微調整をマニュアルフォーカスで補ってあげます。
私は、左手の親指でピントリングを微調整してレリーズしています。
この最終微調整を覚えれば、格段にピント調整が楽になりますよ!
【AFモード】
オートフォーカスにはいくつかのモードがあります。
各社、呼び名が微妙に違いますが、概ね同じ様なモードが準備されているはずです。
AF-S(シングルAF)AF-C(コンティニュアスAF)AF-A(オートAF)この3種類です。
AF-S(シングルAF)
このモードは一番シンプルなモードです
シャッターボタンを半押しするとオートフォーカスが働きます。
一度ピントが合うと、シャッターボタンを離さない限りピントは固定されます。
このモードは、主に止まっている野鳥を撮るときに向いているモードです。
AF-C(コンティニュアスAF)
このモードは、動きものに向いていると言われているモードです。
しかし、個人的にこのモードの多用は禁物だと思っています。
というか、このモードの特性をしっかり理解していないと
ピントが微妙な写真を連発することになりますので注意してください!
このモードは、シャッターボタンを半押ししている間中、オートフォーカスが働き続けます。
逆を言うと、常にピントが安定していないということになります。
ですので、きちんと目で見て瞬間を判断しながらレリーズするということを心がけたいです。
主に飛んでいる野鳥を撮るときに向いているモードだと思います。
AF-A(オートAF)
このモードは、私はハッキリ言うと使いません。
このモードは、AF-SとAF-Cをカメラが自動で判断し切り替えてくれるというものです。
被写体が動いているのか?止まっているのか?
そこを、カメラが認知し自動で良きに計らってくれるモードです。
このカメラの【良きに計らう】という行為がハッキリいうと信用なりません。
現代のカメラの性能が上がったと言っても、レリーズするタイミングは人が決めるのですから
カメラが自動で行う行為はできるだけ減らしたいというのが私の考え方です。
以上、この2つのモードをその場の状況に応じて切り替えて使うということになります。
最初、慣れるまでは切り替えるのを忘れてしまったり、戸惑ったりしてしまいますので
迷ったら、AF-Sモードで撮影することをお勧めします。
【AFエリア】
AFエリア設定が一番悩むところだと思います。
この設定は、上記のAFモードをどんな範囲で使用するか?またはどのポイントで使用するか?
そういった、フォーカス位置を決めたり、フォーカスを探る範囲を決めたりする設定です。
これも、メーカーやカメラによって名称や選べるモードが変わってきます。
ですので、ここでは大まかな説明に留めておきます。
ご自身のカメラの設定と見比べて、最適なモードを選んでみてくださいね!
シングルポイント
これは、複数あるAFポイントの中から自分の好きなポイントを選び、そのポイントのみでピント合わせをするモードです。
ポインターと呼ばれるカメラ背面にある十字キーで、ポイントを動かして選択します。
メリットは、シンプルで分かりやすいということと、止まっている被写体を確実に捉まえるということです。
また、好きな位置にポイントを持っていけるので、構図を決めやすいというメリットもあります。
ダイナミック
このモードはシングルポイントの拡大版というか、アップデート版の様なモードです。
基本的にはシングルポイントと同じなのですが、被写体が動いた際、選んでいるポイントの周辺ポイントが、引き続き被写体を捉えてピントを合わせ続けてくれるというものです。
つまり、ちょこちょこ動いている野鳥にオススメのモードになります。
オートエリア
カメラが、全てのフォーカスポイントの中から最適なポイントを選んでくれるモードです。
逆を言うと、好きなポイントを選ぶことはできません。
このモードは、主に、なんの障害物もない空を飛んでいる野鳥に向いていると思います。
AS-Cとの併用で、飛んでいる野鳥を撮影する時は、一番楽にフォーカスを合わせることができるモードです。
AF追従
このモードは、一度この被写体!と決まってしまえば、カメラが自動で追従しポイントを切り替えてくれるというモードです。
オートエリアに似ている様な気がしますが、オートエリアより連続性を持って動くのが特徴です。
このモードは、カメラによって搭載されていなかったり、精度が悪かったりしますので
お手持ちのボディの特性を考えて使うと良いかもしれません。
手ぶれ補正
望遠レンズには手ぶれ補正機能がついていることがほとんどです。
超望遠レンズだと、どうしても手ブレが起きてしまうので、手ぶれ補正はONにしておきましょう。
しかし、手ぶれ補正にもデメリットがあって
ピントが合いにくくなったり、近くの像と遠くの像に歪みが出たりします。
ですので、被写体があまり動かず一脚で支えている様な状況ではOFFにした方がいい場合もあります。
【SPORTSモード】
動いている被写体に特化したモードです。
通常の手ぶれ補正に比べると、止まる感は薄いのですが
横の動きにスムースになるので、飛んでいる野鳥を追いかけ易くなるのが特徴です。
露出
これも、野鳥撮影ではとても大切な要素です。
写真を撮るときには、絞りやシャッタースピードやISOで露出を決めます。
つまり、写真の明るさを決めると言うことです。
その際、カメラの露出計を見ながら露出を判断したり、Sモードなどの時にはカメラが自動で判断したりします。
この時に、この測光モードを適切に設定していないと、暗すぎたり明るすぎたりしてしまうのです。
【測光モード】
まずは、基本的な測光モードを確認しておきましょう。
どんな場面でどんな測光モードが向いているのか、押さえておいてください。
マルチパターン測光
画面全体を平均的に測光してくれるモードです。
このモードが一番安全というか、まずミスが少ない測光モードになっていると思います。
このモードを極めれば、測光の基本が理解できると思いますので
初心者の方は、このモードに固定で撮っても良いかもしれません。
中央重点測光
このモードは、画面の中央が一番綺麗に見える明るさになるように測光してくれるモードです。
逆に、画面周辺の測光は無視するということになります。
野鳥撮影の場合、野鳥を中央に置くことが多くなると思います。
例えば、藪の中に野鳥がいる!そんな時は、中央の野鳥だけ綺麗に測光する。
そういった使い方が出来るモードになっています。
しかし、正直にいってこのモードは野鳥撮影では使いません!!
なぜかというと、下記のモードがあるからです。
スポット測光
このモードは、先ほどお話ししたAFポイントの位置を一番綺麗に測光するモードです。
中央重点測光の移動するバージョンですね。
このモードは、野鳥にピントがあった時に、その野鳥を一番綺麗に撮れるという意味では最も優れているモードです。
しかし、いくら野鳥が綺麗に映っても、その他が白飛びしてしまったりしているともったいないと思います。
ですので、よっぽど明暗差がある時などに使用すると良いと思います。
【露出補正】
これは、カメラ内の露出計を、基準より暗めに設定したり明るめに設定したり出来るというものです。
露出計を見て、0の位置を基準と考えると、−1や+2など表記されていると思いますが
この基準の0を明るめにするとか暗めにするとかできる設定です。
マニュアルモードで撮影している時は、ほとんどこの考え方は必要ありませんが
SモードやAモードで撮影している時は、ここをきちんと設定していないとうまく撮れません。
基本的な考え方は、背景が暗い場合はマイナス補正をかける。
背景が明るい時はプラス補正をかけると覚えてください。
よく『背景に露出を持っていかれる』なんて言ったりしますが
背景が暗い場合は、カメラが明るくしようとするので、被写体も明るくなりすぎる場合があります。
特に、ダイサギや白鳥など、白い野鳥を撮る時には、白飛びすること間違いありません。
ですので、背景が暗い場合は、少し暗めに撮ろうと心がけるとうまくいきます。
逆に背景が明るい場合も同じで、カメラが暗くしようと頑張ってしまいます。
ですので、背景が明るい場合は、プラス補正をかけ明るく写そうと心がけます。
特に、黒っぽい野鳥(カラスとかムクドリとか)を撮る時は気をつけたいです。
シャッタースピード
野鳥撮影を行う上で、一番気になるのがシャッタースピードだと思います。
絞りは、基本的には開放でOKですが、シャッタースピードは細かく調整しなくてはいけません。
Sモード(シャッタスピード優先)で撮影している人も多いと思います。
ここでは、基本的なシャッタースピードの考え方を表で表してみたいと思います。
使う時の目安 | 適正シャッタースピード |
止まっている野鳥 | 1/500~1/1250 |
動いている野鳥 | 1/2000~1/4000 |
初心者の方は、上記の表を頭に入れておけばとりあえずは安心です。
時間帯や天気など、ISO感度やレンズ焦点距離、表現したい写真など、状況によって変わってくるのですが
とりあえず、綺麗にブレない写真が撮りたいと思ったら、この設定で大丈夫です。
意外と速い!と思う方もいると思いますが
野鳥は細かい動きをしていますので、このぐらいでないとブレてしまうのです。
また、超望遠レンズですので、手ブレも起きやすい事を考えていないといけません。
逆に、この設定以外で撮りたい時
例えば、水や雨の動きを表現したり、羽だけ振らしたいなど、スローシャッターで撮影したい時
そんな時は、それなりに練習をする必要があります。
ですので、最初は上記の表を意識してシャッタースピードを決めていけば良いと思います。
【ISO感度】
ISO感度は、ノイズの問題などから気になってしょうがない項目だと思います。
しかし、ここは考えてもしょうがないとしか言いようがない部分もあります。
どうしても超望遠レンズだと、最低F値は大きくなってしまいますし
動き物の野鳥撮影では、シャッタースピードは上げないとブレてしまいます。
ですので、適正露出を出していくと、自ずとISO感度は高めに決まってきます。
あとは、スローシャッターでも撮影できる技術を上げたりするしかないと思います。
ですので、ISO感度に関していうと、なる様になれ!って思う方が思い切って撮影できると思います。
構図
最後に、構図について少し触れておきたいなと思います。
構図は、人それぞれ美しいと思うポイントが違うと思いますので
自分の好きな構図を見つけていくというのが一番良いとは思います。
しかし、何パターンか頭に入れて撮っていくと、自身の好きな構図が見つかりやすいのかなと思っています。
野鳥撮影に向いている構図をいくつかピックアップしてご紹介します!
【日の丸構図】
ど真ん中に野鳥を配する日の丸構図。
野鳥撮影では基本中の基本だと思います。
とにかく、野鳥をクローズアップして美しく見せたい!そう言った効果があります。
この構図をマスターすることから始めると、野鳥撮影の上達の近道だと思います。
【三分割構図】
画面を縦や横で三分割に考え、被写体を配置する構図です。
余白が生まれることで、写真の印象に深みが増してきます。
この時、周りに映り込む景色も意識し、野鳥がどの様な環境にいるのかを表現できれば最高です!
【三角構図】
三角形はとても美しい形です。
自然の中にも様々な三角形が存在します。
【この形美しいな!】そういった感覚が大切だと思います。
好きな形を見つけ、それを写真の中に盛り込んでいく
そういった意識を持っていれば、自然と構図が定まってくると思います。
【斜め構図】
野鳥の止まっている枝は絶好のアイテム!
枝の長さや太さや角度を考えて、写真に綺麗に収まる様に考えてみましょう。
斜めのラインを写真に入れすことで、動きを感じさせることが出来ます。
バランスをとった位置にすると、締まりのある美しい写真に仕上がります。
【前ボケ】
構図とは少し違いますが、前ボケを上手く取り入れるのも上達の近道!
写真に遠近感が出てくるので、深みのある写真になります。
それに、野鳥が浮き立って見えるので、より印象的になる効果も!
草や木、建物、人物、いろいろな前ボケを利用してみてください!
野鳥撮影を楽しもう!
すごく長い記事になってしまいましいたが、これさえ押さえれば大丈夫ってない様になっていると思います。
一度に全部をとなると、ちょっと頭が混乱してしまうかもしれません。
ですので、1日一個づつ意識しながらマスターしていってほしいなと思います。
最初はテンパってしまう事もある野鳥撮影ですが
慣れてくると、設定をいじって遊んだり、好きな構図を見つけたり。
色々と自由に撮影できる様になってきます。
自分だけの一枚を!是非撮影していただきたいなと思います。
ではまた次回。
【関連記事】
野鳥撮影のマナー!絶対に守って!完全マニュアル