目次
クロツラヘラサギ
干潟に海鳥を見に来たコアラ。
ん・・・?
なんだかおもしろいクチバシの鳥さんを発見!!!
黒いしゃもじのような嘴の鳥を一緒に観察してみましょう。
クロツラヘラサギの特徴
シャモジのような嘴!
クロツラヘラサギは、なんといっても黒いシャモジのような嘴が特徴的な鳥です。
黒いシャモジ(ヘラ)のような嘴、そして顔が黒いから、クロツラヘラサギ。
英名はSpoonbill(スプーンのクチバシ)です。
確かに、シャモジにも似ているけど・・・昔あった木製のアイスのスプーンみたいですよね。
ちなみに、ヘラサギという同じようなクチバシを持った種類の似た鳥もいます。
その違いは、「クロツラ」か否か。
つまり、顔が黒いほうがクロツラヘラサギで黒くないのがヘラサギです。
鳥の名前ってあまりに短絡的だと思うことがありますが、とってもわかりやすいですね。
黒いクチバシは大人の印
クロツラヘラサギは、雌雄同色。
つまり、オスとメスは同じ色ということです。
しかし、大人(成鳥)と子供(幼鳥)はクチバシの色が違いますよ。
まず、子供のころはクチバシが黄色っぽい茶色!
そして、大人になるにつれて、どんどん黒くなっていくというわけです。
ちなみに、クチバシにはデコボコの模様が入っていますがこの模様は大人になるにつれ濃く深くなっていきます。
長く生きている個体は、しわの深さも深く濃いというわけです。
つまり、いぶし銀のかっこよさが味になっていくわけだ~~~素敵だぞ~~~~!
ペリカンの仲間?そしてトキの仲間!
クロツラヘラサギは、体長75~80cmくらい。
うちクチバシの長さは20cmほどあるので、立派なクチバシですよね。
そして、サギという名前ですが・・・ペリカン目トキ科!
つまり、あの絶滅寸前のトキの仲間なんです。
そして、また・・・クロツラヘラサギも個体数が大幅に減少しており、現在、絶滅危惧種となっています。
そして、透き通るような白さの羽根もまた特徴的。
冬羽と夏羽!まるで別人
また、夏と冬で見た目の印象が違う鳥でもあります。
まず、冬場は羽根が真っ白でくりくり頭。
しかし、夏羽に変わると胸元が黄色っぽい色になります。
そして、ふさふさの冠羽が出現!
でも、あの立派なクチバシがついていなかったら、ちょっと同一人物(ヘラ鷺だけど)には見えないよ~~~!
生態と観察のポイント
いつ出会える?
彼らは、東アジアを中心に生息している鳥です。
朝鮮半島やロシアのあたりで繁殖し、日本には冬鳥としてやってくる渡り鳥。(ご近所の台湾や香港、また東南アジアのベトナムにも冬鳥として飛来)
つまり、日本でクロツラヘラサギを観察するチャンスは主に冬!
どこで出会えるの?
残念ながら、絶滅危惧種であるクロツラヘラサギ。
つまり、個体数がとても少ないので、出会うチャンスはとても少ないです。
また、彼らは、干潟にやってくることが多く、そしてその多くは九州(福岡・佐賀・熊本・鹿児島)などに集中しています。
冬の風物詩
私は以前、福岡に住んでいたのですが・・・
冬になると地方紙に「今年もクロツラヘラサギが〇〇干潟にやってきました」という記事と写真が載っていて、子供のころからこの鳥のことは知っていました。
だって一度見たら忘れられない姿と名前!!ですもんね。
九州以外でもチャンスがあれば見られます
しかし、九州以外でもわずかな数ですが飛来する干潟があるようです。
私は、先日「チドリ」を観察しにでかけた関東の干潟で偶然出会うことができました。
【葛西臨海公園】mililieの野鳥観察記vol.6 – mililie
「え~~~~!関東でも見られるとは思わなかった!」と双眼鏡を握りしめてつぶやいたら
よく観察に来られているおじさんが
「ずっと冬に観察に来てるんだけど、以前は1羽だったんですよ。でも近年2羽になりました。多分つがいです。」と話してくださいました。
仲良く餌をついばむ姿がほほえましく「増えるといいですね~」なんてしみじみ話をしましたよ。
顔をあげて!
さて、彼らを観察していてまず思ったこと。
「顔あげて~~~~~~~! 自慢のクチバシを見せて~~~~」でありました。
クロツラヘラサギは、干潮時の干潟に姿を現し・・・それからず~~~~っと潮が満ちるまで
嘴を水面下につっこんで、首をリズミカルに左右に振りながら一心不乱に嘴をパクパクと動かし続けています。
私が観察した際は、2匹のつがいでした。
2匹ならんで、リズミカルに首を振り続ける様は、まるでなにかの踊りのようで面白かったです。
何を食べているのかな。
さて、彼らが何を食べているのか?
彼らは一心不乱にクチバシをパクパクし続けて、たまたまクチバシに触れた甲殻類や魚などを捕食しています。
たまたま!クチバシに触れた餌を捕食しているってなかなかな捕食方法・・・。
自然のデザインのすごさ!
やみくもにパクパクするスタイル。
一見、効率悪そうではありますが、あのクチバシで、あの調子で終始パクパクパクパク嘴を動かし続けたら・・・結構いい確率で獲物にありつけるのかもしれませんね。
あの捕食スタイルだから、このクチバシのデザインなのか!!と自然のデザインにとても感心しました。
自然の色やデザインというものには、本当にいつも敬服するばかりです。
絶滅危危惧種
絶滅寸前?その原因は何??
ユーモラスなクチバシを持つこの愛すべき鳥が、なぜ絶滅の危機に立たされているのか?
それはやはり、悲しいけれど私たち人間が原因です。
急激な人口の増加に伴う、住宅や工場やテーマパークなどの娯楽施設、養殖などのための沿岸部の埋め立てや開発が原因で、彼らの居場所や彼らの餌となる生物が減ってしまったため・・・というのが最大の原因。
寄り添う2人
私がクロツラヘラサギを観察した関東の干潟。
そこは人間の手で手厚く守られている小さな干潟のようでした。
しかし、絶滅危惧種の彼らがたった2羽で一生懸命に餌をついばむそのすぐ向こう側には、人間のための広大な娯楽施設がそびえたっているのが見られました。
その様子は、なんとも彼らのおかれた状況を物語っているようで・・・見ていて複雑な気持ちになりました。
干潟の役割
干潟というのは、陸地から流れ出てきた有機物や栄養塩が集まってくる場所。
なので、二枚貝や甲殻類、ゴカイなどといった生物がたくさん生活しています。
つまり、それを餌にする野鳥たちの餌場としても重要です。
いや、鳥のために重要なだけではありません。
干潟には微生物も多く存在し、干潟は水質浄化の役割もはたしています。
つまりは、人間にとっても大切なエリアなのです。
ラムサール条約
1971年 地球規模で渡りを行う水鳥たちを、食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守る目的として
「湿地保全に関する国際条約」が制定されました。
それがラムサール条約。
こうやって、干潟や鳥を守ろうという動きが世界規模で行われているのです。
干潟の大切さを考える(国立環境研究所)
干潟の大切さを考える|環境儀 No.45|国立環境研究所 (nies.go.jp)
増加傾向
そして、近年クロツラヘラサギは、すこしずつ増加傾向にあるそうです。
環境破壊は進む一方なのですが、やはり彼らや自然を守ろうとする国際的な人々の行動が
その数の増加の後押しをしているのだと思います。
干潟の保全なんて日々続く環境破壊の前には暖簾に腕押しに見えます。
「今更遅い」「やっても仕方ない」なんていう人もいますが、現にクロツラヘラサギは少しずつ増加傾向にあるのです。(しかしそれでもまだ、絶滅危惧種であることには変わりありません。)
だから、やらないより、やったほうがいい!
つまり、小さな力でも継続すれば大きな結果につながるかも??
まとめ
人は生きている以上、その経済活動を止めることは不可能です。
そして、人は他の種を滅ぼすほどの力と技術を手に入れてしまいました。
自分たちの娯楽と少しの便利のために、自分自身が自然環境にいかに大きな影響をあたえているのか。
ひとりひとりがちょっとだけ学んで、ちょっとだけ考えること。
でも、これだけで世界は少しずつ変わっていくのだと思います。
自然破壊を食い止めよう!一人一人が考えるべきこと。 – mililie
私たち人間が他の生き物たちを支配するのではなく、共に、ハッピーに生きていける世界を目指せたら
どんなに素敵だろう。
クロツラヘラサギの愛らしい姿を見ながら心から思った私です。
ではまた次回!
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【今回使用した機材・画材】
ステッドラー水彩ペン
ホルベイン色鉛筆
NIKON D500
Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR