目次
コルリ
コルリが、薄暗い林の中で大きな声で囀っていますよ。
可愛らしい小さな青い鳥さんをよ~~く観察してみましょう。
なかなか出てこないからじっと待つよ!
コルリの特徴
コルリは、スズメ目ヒタキ科の青い小鳥です。
以前は、ツグミ科に分類されていたので、現在も「ツグミ科」と書かれていることが多いのですが
現在はDNAでの鑑定結果などにより「ヒタキ科」に分類されています。
同じブルーの体色の鳥ということで、オオルリと比較されることも多いのですが、実はノゴマやコマドリの仲間です。
瑠璃色の小さな小鳥
コルリは、文字通り瑠璃色の小さな小鳥です。
全長は14cmとスズメより小さめ。
そして、ほっそりとした長い脚もポイントですよ。
見ていて心配になってしまうくらい華奢で小枝のような脚です。
これは、上手に足を使って地面を移動することに由来します。
地面をしっかり蹴って進めるように進化しているんですね!
オスの背面は、深いブルー。
眼がしらから胸のわきにかけて、黒い筋状のラインが入ります。
また、お腹が真っ白でかわいいですよね。
そしてメスは、全体的に濃いベージュトーンですが、背面や腰部分がうっすらとブルーがかっています。
地味ですがとってもきれいですよ。
光の加減で変わる瑠璃色
特徴である羽根のブルーは、カワセミのそれと同じ構造色です。
構造色とは、異なる波長の光が体表面の微細構造によって、いろいろな程度に反射し、また、増幅し、干渉、吸収など複雑に影響しあって生み出される色のことです。
光の加減で、鮮やかな群青色に見えるかと思えば、黒味がかったシックな紺色に見えたりしますよ。
ちなみに、コルリの青い羽根を1枚・・・硬い台の上に置き、ハンマーでたたくとその構造が破壊され、
青い羽根は一瞬で茶褐色に変貌します。
つまり、美しくも、なんとも不思議な羽根なのです。
コルリの生態
日本では夏鳥
コルリは、夏場に中国の北東部、日本、ロシア、朝鮮半島で繁殖をします。
つまり、日本では夏鳥ですね。(北海道、本柱中部以北に飛来)
冬は、中国南部から東南アジアまで移動して越冬しています。
熾烈な縄張り争い
彼らは一夫一婦制。
繁殖地である日本には、オスがメスより5日ほど早く到着します。
そして、熾烈な縄張り争いを繰り広げます!
この争いに勝つことは、いいお嫁さんを得て子孫を残すことに繋がるので必死な戦いとなるわけですね。
可愛い姿の彼らですが、戦いは結構ハード。
体を水平にし、顔の黒い羽毛を逆立てて・・・大きく嘴を開いて威嚇!
そしてライバルを追い回しますよ!
ちいさいけれど、やるときはやります!!
また、この時期は「ここは僕の縄張りだ!!だれも入るなよ!!!」と四六時中示す必要があるために
早朝から夕方までよく囀ることになります。
つまり・・・人間にとっては、春先、彼らが渡って来たばかりの頃が、コルリを発見しやすい時期ということになりますね。
繁殖
彼らは5月~7月にかけて4~6個の卵を産みます。
メスが抱卵、抱雛しオスは縄張りを守りながら、せっせと餌を運んでいます。
ちなみに、カッコウの仲間のジュウイチに托卵されることでも有名です。
前奏つきの大きな鳴き声
また、彼らの鳴き声が特徴的です。
まず、本格的なメロディラインに入る前に「チッチッチッチッ」と前奏が入るんです!
それから、、、その小さな体からは想像できにくい音量で「チーチョルチーチョルチーチョルチ~~~!!!」や「ピールリピールリピールリ!」などメロディアスに歌い上げますよ。
聞くたびに「うわ~~~今日も気合入ってるな~~~~」と感心する歌声です。
コマドリに似ている鳴き声で、住む場所も似ているので間違えやすいです。
しかし、「チッチッチ」という前奏を聞き逃さなければ、すぐにコルリだと判断できます。
どこに住んでいるの?
コルリは、低山から亜高山帯(標高600~1800m)の落葉広葉樹林(雑木林やブナ原生林)にいます。
広葉樹の林床を笹が覆っているような、笹薮のような場所を好みます。
つまり、ちょっとごちゃっとした場所がお好みなのですよね。
また、笹藪のある林だったら、針葉樹林との混成林での営巣する事があります。
なかなか姿を見せない青い鳥
彼らは、藪の中がお好み。
そのため、その低木の林や笹藪の中から出てくることがありません。
声はすれども・・・姿は見えぬ・・・というパターンが多い鳥です。
写真を撮るにも枝が邪魔で・・・なんてことも多いようです。
しかし、ごくまれに道の脇にふらりと現れることもありますよ。
チョンチョンと二足跳びで移動する姿は、悶絶もののキュートさです。
また、早朝は比較的高い木の上で囀ることも多いので、じっくり観察したい場合は早朝がお勧め。
早起きの鳥は虫を捕まえる!
早起きは三文の徳!
間違いないことわざですね。
森の階層構造!
コルリちゃんが低木の林を好むということで、ここで少し森の階層構造について少しお話!
森は階層構造になっています。
主に、地面に近い場所から「林床」→「草本層」→「低木層」→「高木層」と名前がついていて
それぞれにそれぞれの役割を持っていますよ!
たとえば、林床は微生物たちの活動をサポートしています。
森の分解者たちの住処ですね。
そして草本層は、土地の乾燥を防ぐ役割を担います。
シダ植物などがそれにあたりますよ。
また、低木層は野鳥や虫たちの生活を支えます。
そして、亜高木層や高木層があることで、雨や日光の量が調節されているというわけ。
豊かな森であればあるほど、この層は厚く、生物多様性に富み広い生態網を持つということになり
たとえば、人工林などだと、この層は薄く、生物多様性も薄く生態網は狭くなることになります。
もちつもたれつ
このそれぞれの階層は、前述の通り、それぞれの働きをもっています。
そして、それそれが共生関係にあるのです。
もちろん、そこにいる虫や鳥、小動物たちも。
もちろん、コルリもね。
まとめ
今日はコルリについて書きました。
このコルリは、現在関西から九州以北にかけては大幅に数を減らしている鳥です。
東京では準絶滅危惧種に指定されていますよ。
その原因というのは、近年コルリが好んで住む「笹」(クマザサやスズタケ)が数を減らしているためのようです。
この笹枯れ問題は、今全国で問題になっていて、多くの研究者の方々が原因を調べています。
笹枯れを目撃
先日、山梨の某山にバードウォッチングに出かけましたところ・・・
あることに気が付きました。
スズタケが枯れているのです。
多くのスズタケが、葉を落とし無残な姿に・・・。
地元のバードウォッチャーのおじさまに話をきくと
「今年は笹が枯れちゃってるからね、コルリもコマドリも少ないんだよ」とのこと。
病気なのかな???
人間のせい???
少し気になったので、山梨県のHPなどを見てみると・・・山梨県全域の様々な山で、笹枯れが発生中にて調査中とのこと。
専門家にきいてみた!
調査を依頼されている山梨県環境研究所の方に問い合わせてみたところ
大変丁寧に教えてくださいました。
まず、病気ではないということ。(現在、スズタケを大量に死滅させる病気は発見されていないとのことです)
そして、調査をしたけれどはっきりとした原因はつかめていない・・・とのことでした。
ただ、増えすぎた鹿による食害のためというのもかなり大きな要因のようです。
竹の仲間は、60〜120年に一度、一斉に花を咲かせて枯れるという生態を持っています。
これは、寿命を終えた竹(竹は地面で繋がっているので正確に言えば一つの個体)が
死滅する前に、子孫を残そうと種を散布し、寿命を終えるという現象です。
全国的な傾向?
しかし、今全国で起きている笹枯れは、広範囲に同時多発的に起きています。
どのような原因で大量の笹が枯れているのか?
そして、その笹を頼りに生きている多くの動植物がどのような影響を受けているのか?
専門家でもまだ結論が出ていないという状況だということです。
自然環境は複雑で繊細
このように、笹が枯れるだけでコルリやコマドリなど笹薮を好んで生息する野鳥たちは姿を消してしまいます。
森の階層構造のお話でも書きましたが、それぞれがそれぞれの役割を持ち、影響しあう関係なのです。
何かひとつ欠けてしまうと途端にバランスを失ってしまう結果にもなりかねません。
皆さんは、野鳥が大好きで野鳥観察をしていると思います。
しかし、野鳥の周りにも少し目を向けてみてください!
野鳥の暮らす環境が、また違った見え方をしてくると思います。
鳥がいて、そこには鳥の住む環境があり、鳥が食べる餌となる虫がいます。
生態網というのはとても複雑で、かつ、どれが欠けても、どこかに影響が出てしまう繊細なものです。
そういうことを野鳥達は教えてくれています。
些細なことが甚大な影響に??
人間は、悪気なく安易に自然に手をくわえてしまうことがあります。
たとえば、餌付け問題。
たとえば何かホームセンターで売っているような鳥の餌となる木の実や草の実を撒くとします。
すると、鳥がそれを食べ、排せつし、そこからその種が発芽してしまうことがあります。
そこにもともと生息していなかった種類の草が、そこで発芽しそして成長した場合・・・
その小さく些細な出来事が、そこにいたほかの植物に影響を及ぼし、その植物が枯れはててしまうことにもつながるかもしれません。
野鳥だけでなく環境もしっかり観察!
そして、その植物と密接に関係している動物(もちろん野鳥もです)に影響を及ぼすことも十分にあり得るわけです。
私たちの些細な行動が、いつか私たちの大好きな野鳥に影響を及ぼしてしまうかもしれない。
そんな可能性をしっかりと考えながら、もっと慎重にもっと繊細に、自然環境というものを考えていかなければならないなと感じる今日です。
野鳥を観察するときには、しっかりと野鳥を取り巻く環境、そして自分たちがそこにどう影響するのかを考える必要があると思いましたよ。
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【今回使用した機材・画材】
ステッドラー水彩ペン
ホルベイン色鉛筆
NIKON D500
Nikkor AF-S 200-500mm f/5.6E ED VR